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新・農業経営者ルポ

有機酪農が導いた原点回帰 形は変えても継続を

現在も決められた価格で売るだけが主流の牛乳生産。そこに風穴を開けたのは自給飼料にこだわった高品質乳と環境保全意識の高さだった。乳業メーカーとタッグを組みながら、有機酪農の新たな地平を切り開いてきた石川賢一とその仲間たちの16年をたどる。 文/加藤祐子、写真/網走農業改良普及センター美幌支所・加藤祐子
2006年9月に明治乳業(株)が販売を始めた「オーガニック牛乳」。明治乳業札幌工場の朝一番のラインで1リットルのパック詰めされた製品は、北海道札幌市内のコープさっぽろを皮切りに、首都圏のナチュラルローソンや東都生協をはじめ、北海道外にも流通量を増やしている。
その原料乳を生産しているのが、北海道津別町の有機酪農研究会の酪農家たちだ。石川賢一は現在、その会長を務めている。有機酪農の誘いを受けて試行錯誤を始めてから約16年。その間、石川の酪農経営はどう変わり、何を感じ、どこを目指すようになったのだろうか。

環境に配慮した
オーガニック牛乳の誘い

津別町は北海道オホーツクエリアの空の玄関、女満別(めまんべつ)空港から西南に車で30分ほどのエリアに位置する人口約5100人の農林業の町である。町内の酪農家は現在24軒。そのうちの8軒が有機酪農研究会のメンバーだ。
我が国では法律のもと、「有機」「オーガニック」といった文言を商品名に記載できるのは、有機JASの認証を受けている事業者に限られる。同研究会では、現在7軒が有機JASの認証を取得し、約2300t/年の有機生乳を生産している。今年の4月にもう1軒が認証を取得すると、8軒目になる。牛乳の生産工程でこの認証を取得しているのは、千葉の(有)大地牧場とこの研究会とまだ希少な存在である。
同会が発足したのは、1999年のことだ。きっかけは、乳業メーカーの工場再編を機に、特色のある牛乳づくりを画策していた明治乳業からの誘いを受けたことである。
津別町はもともと脱脂粉乳やバター、チーズ等向けの加工原料乳の生産地域だった。加工原料乳は飲用牛乳等に比べて乳価が低く、その差額を国が補助金で補償する仕組みが運用されている。90年代に乳価低迷に苦しんだ津別町の酪農家らは、飲用牛乳向けに出荷できる地域にという意欲のもと、乳質改善に努め、ふん尿処理施設を整備、放牧の導入に取り組んだ。さらに自給飼料を中心とした牛乳づくりができないかと思案していた。

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