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特集

来たれ!TPP【中編・実践講座】


畑作農家では5~6品目を生産していますが、それぞれの作物に機械投資する必要はありません。スコットランドの北海道版として、ジャガイモ農家に長イモ農家、甜菜農家や小豆農家、さらに小麦農家が、個々の畑を共同農地のように輪作し、それぞれの作物の利益をそれぞれの輪作面積に応じて分配していく。理論的には成り立つ気がします。
十勝のような大農業地帯でも、他作物と作業が競合する、収穫の手間がかかりすぎる、ハーベスターが更新できない、後継者がいないといった理由から、せっかく需要があるのに手間や労力のかかるジャガイモの生産をやめる農家が出てきています。需要に対応できなければ、加工メーカーとの産地全体での契約数量が減り、結果的に生き残る農家の経営展望にも悪影響を与えます。そうした危機感から、ジャガイモ農家の撤退に歯止めをかけようと作業受託を始めた経緯もあります。
芽室町の場合、1戸当たりのジャガイモの平均作付面積は6~7haです。旧式の機械と家族労働でこなせないことはない面積ですが、高齢化や家族の誰かが倒れたときなどは我々の作業受託でカバーします。それでも大方の農家の過剰投資は解消されず、作業の手間も減らないという農業がいつまで続けられるのか……。いずれ行き詰まると思います。
地域全体で作物ごとのプロフェッショナルを育成し、機械の所有や管理を任せる。作物ごとの作業体系や機械体系、どれくらい労働力が不足しているか、振り向けることができるかなどを地域で考えることで問題の解決が図れます。ジャガイモや小麦にはEU(スコットランド)という手本があります。受委託者に目に見えるメリットを提示していくことでそこに近づける見通しができてきます。
また、我々を含めジャガイモの生産上では、収穫物の選別や運搬作業が作業効率のボトルネックでした。この点は、加工メーカーや荷受会社とで改善に向けて何度も話し合うことで、作業の効率化を進めるうえで作業精度をより一層高めることをも目指し、2013年から作業受託組合でジャガイモの施肥・播種・培土の春作業を一工程で終わらせるドイツのオールインワンシステムを導入しています。作業体系も変わって作業に携わる人が少なくて済み、人手不足解消に役立ちます。システムを運用する熟練のオペレーターや技術指導できるアドバイザーが新たに必要になってきますが、生産性の向上が実感できます。
なお、昨年、息子の代になって初めて酪農家と交換耕作しました。約8haのジャガイモ跡地に牧草を作り、酪農家の飼料畑跡地8haにジャガイモを栽培する交換耕作で、これから3年近く続きます。牧草は大豊作で、飼料畑で採れたジャガイモも収量、品質とも最高でした。初回はお互いの利益になる結果が出て、この正月に祝杯を挙げました。もちろん、今年以降も同じ結果が続くかは不透明です。

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