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特集

来たれ!TPP【中編・実践講座】


甘味資源作物には今後、産業化に向けたイノベーションが必要でしょう。たとえば、先進国のコーヒーショップやレストランには白砂糖に加えてダイエット人工甘味料が普通に置かれています。ヘルシー志向はアジアの富裕層、女性にまで広がりつつあるのですから、体の温め効果と整腸作用のある甜菜糖(ビート)、ビタミン・ミネラル豊富で漢方にも使われる黒砂糖(サトウキビ)原料のヘルシーシュガーを商品化する。そして、食品メーカーや商社と組んで国内外の病院・介護福祉施設、あるいはコーヒーチェーンでの採用を目指す戦略が考えられるでしょう。
適切な戦略によって聖域とされる5品目で高関税や補助金の保護が不要となれば、日本の加工メーカーは国内外から良品質で国際競争力のある素材を調達できるようになります。

【世界展開を視野に入れ、飲食店などを支える裏方としての食材製造事業に注力】

日本農業を素材産業として捉えると、国産と飼料用を除いた輸入の合計額は約10兆円です。1億3000万人の食費を合計すると、100兆円規模の食産業になります。つまり、素材の価値を10倍に高める技術やイノベーション、そしてフードサービス産業を生み出す力を持っているということです。
仮に世界が日本と同じくらいの豊かさになるとすれば、これを世界人口70億人に当てはめると5000兆円、TPP域内の8億人としても600兆円。また、TPPに参加していない国もありますが、中国やインドネシアなど、コメの食文化があるアジアには現状で、年収5万から50万ドルの中間富裕層3億6100万人(投資銀行クレディ・スイス「世界の富リポート:2015」)もいます。将来を見据えれば、アジアだけで1000兆円規模の食産業になる可能性があるのです。その食産業市場の少なくとも1、2割は日本の食産業が取れると私は見ています。海外から見た日本は「ドラえもん」に登場する未来の姿だからです。
私は外国の富裕層から自分の国に一番欲しいのは「デパ地下」といわれました。和洋中の食材から総菜、弁当、スイーツが並び、メニュー開発やテナント間の競争も激しい。日本の食産業はあらゆる業態が過剰出店の状態で、常にコストと技術、サービスの徹底した刷新をしないと生き残れないのです。
こうした食産業を支えているのが、素材を調達・確保して下処理するサプライチェーンの存在です。日本式のコンビニ、スーパー、飲食店が海外の進出先で日本の商品・サービスを提供できないのは、サプライチェーンの近くにないためです。食材製造を日本の食産業が担うには、世界の食産業を日本化するために一極集中の大都市にフロントの日本式飲食店と、バックエンドのサプライチェーンがセットで進出する。現地で和食や日本式サービスの美しさ、おいしさ、きめ細やかさが認知されたところで、小売量販店が進出。その後、多様な業態の食産業が進出するプロセスが確実で収益も最大化できるのではないでしょうか。

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