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特集

来たれ!TPP【中編・実践講座】


視点を変えて、スーパー・小売店の立場で考えてみたいと思います。じつは、肉売り場全体における粗利の柱は国産豚肉なのです。販売価格の高い牛肉は仕入れ値も張るため、豚肉ほど儲かりません。肉売り場のグレードが下がるので牛肉は外せませんが、鶏肉より単価が高く粗利も大きい国産豚肉が売れたほうが経営的には一番おいしいのです。
さらに別の観点からいうと、農業以外の主たる産業はTPPの推進を望んでいます。価格差2倍以上の国産豚肉が売れるのは国民が豊かだからです。その豊かな消費生活は製造業を中心とした日本の輸出産業に国際競争力があってこそです。
日本は貿易立国ですから、経済活性化には輸出産業の復活しか道はありません。輸出産業の低迷が続いて製造拠点の海外移転などが進めば、国内の雇用と所得が減少し、国産の高付加価値商品は売れなくなるでしょう。その結果、安価な輸入豚肉しか買えない低所得層の国民がどんどん増えていく。自分で自分の首を絞めるようなものなのです。

【精密経営・継続投資で利益を1.5倍に】

養豚業を発展させるための基本条件は4年前と変わっていないと思います。日本人の口に合うさしの多い品質の肉をそろえ、生産コストを引き下げること。この二つを実現できれば、豚価が下がったとしても肉売り場の利益に貢献する食材としてバイヤーに選ばれ、自社の利益も確保できるからです。
当社が行なっているのは、基本データをきちんと収集・蓄積・分析したうえで改善を繰り返す精密経営の徹底です。たとえば、離乳・肥育といった生産段階ごとに体重を測り、各段階での期間増体を記録する。そうして収集・蓄積した自社の過去データと、与えていた飼料の配合データを組み合わせて肉質や増体の変化を詳細に分析。問題があれば原因を特定し、次の生産段階、肥育で改善します。自社の飼料工場を持っているため、迅速で臨機応変な対応が可能なわけです。
飼料工場を建設して5年ほどですが、その間も粉砕機を第二世代にするなど設備更新の追加投資も継続中です。「160日で120kg平均の豚を出荷する」という業界平均より20日ほど短期=コスト削減の数値目標を立て、実現に向けて努力しています。飼料工場の建設前に比べ利益は1.5倍に増大しました。
精密経営に加えて私が重視してきたのが社員の存在です。ほかの産業に引けを取らない魅力的な産業にし、優秀な人材を集め、育てること。私はそれが今後打ち勝っていく大きな力になると信じています。「畜産は3K」という固定概念を覆そうと、8~17時勤務や週休2日制など、一流企業に負けない報酬と福利厚生の実現に取り組みました。新しい取り組みとして5S運動を始め、見た目にも働いている人間にも「きれいな養豚」を目指しました。後継者の息子もこの方針を受け継いでくれています。

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