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実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

第十五章 生産原価と生産技術の改善(1)


生産原価を算出する意義

今回から生産原価をテーマに解説していこうと思う。生産原価の計算で最も重要なのは、単純に作物部門別、製品別でとらえるだけにとどまっていてはいけないことである。
たとえば水稲の単一経営があったとしよう。育苗にかかる費用、各作業機の稼働時間と機械費、労働費の算出、作業ごとの労働の傾け方など、原価を構成する内容や原価が積み上がる過程を知ることで、改善策が見つけやすくなる。無駄な労働と費用を取り除いて、利益をより多く生み出すこと。これが原価計算の真の目的である。そのためにはあらゆる角度から、生産原価を見る必要がある(図1)。
少しおさらいをしよう。本誌2015年12月号特集で取り上げたが、覚えているだろうか。
製造業の場合、製品価格(単価)は、原材料費や賃金費用などの直接費に、工場の操業度合いに応じた間接費を割り振り、目標利益を上乗せして決定する。当然ながら賃金も費用で、原価に含まれる。これをフルコストの原理という。
生産に必要な費用は生産原価と販売一般管理費に分かれている。生産原価とは文字どおり、生産に直接投じられる費用で、材料費、労働費、諸材料費など明確に生産の目的のために投じられる経費のことである。
一方、生産量や販売量に販売単価を乗じると粗収益となる。粗収益は、そこから原価を差し引いた後、利益が出ているのか、利益がいくらもたらされたかまで見いだすためのバロメーターである。1年を生産の一区切りとし、販売結果を反省しつつ、次年度の計画に有効に役立てたい。

利益を図る物差しは
1つではない

耕す面積が限られていた時代には、土地生産性がとくに重要視された。10a当たりの粗収益(反収)である。政府買取価格は一定なので、収量が高まれば粗収益は増え、反収の増加は利益に直結していた。そんな食料増産期には、政府への価格交渉と反収の向上が経営者の大テーマだった。しかし、いまや利益を図る物差しは多様にある。
我が家の経営でいえば、アスパラ、肉牛、牧草、その他農産品の4部門がある。まだ会社経営ではないが、専従者給与や労賃、経営利益(私の取り分)の収支を部門別に見て取れるようにしている(図2)。
簿記の記帳と仕分けの際に必ず各部門別にカテゴリーを分け、販売一般管理費のような間接的な経費は配分率を売上比、労働比、土地の占有比などを根拠とし、各部門に割り振る。どの部門が収支として利益をもたらしているかがわからないことには、生産原価を割り出すことができないからだ。必要に応じて、農政事務所の示すルールに則った全参入生産費や、トラクターごとの稼働率と機械費、アスパラについては収穫や管理作業の労働時間や労働費を算出したりもする。

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