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北海道馬鈴薯でん粉物語

現存する商系馬鈴薯 でん粉工場の奮闘


その後、昭和51年(1976)に青木農産と改名し、でん粉製造ばかりではなく、そば屋やパン屋、レストラン経営に乗り出した。いまでいう六次産業化であり、それぞれ材料や味にこだわり、特長がある。これも創業者の事業精神が引き継がれているといえよう。農地は約50haで馬鈴薯はもちろんのこと、ソバや小麦を栽培している。でん粉工場には8人が勤務しているが、周年雇用で農作業にも従事し、効率良く作業している。無駄な投資はしない。常に工夫で経営に新しい境地を切り拓く。青木農産は頼もしい限りであり、この前向きな精神は敬意を表するばかりである。「天は自ら助くるものを助く」とはよくいったものである。この自助努力が頼もしい。

神野澱粉工場

神野澱粉工場は十勝の更別村に所在する。昭和22年(1947)の創業で、現在の馬鈴薯の年間処理量は約6500tである。昭和30年(1955)の合理化でん粉工場建設の波にも飲まれず、今日あるのは地域の農家や消費者の信頼が厚かったからと考えられる。小規模であるから新規投資を最小限にすることができたことや料理の味を引き出す在来の「つぶつぶでんぷん」(一番粉)をかたくなに製造し続け、その特長が評価されていることなども存続の理由に挙げられよう。
工場は創業時とあまり変わっていない。破損した箇所があっても自分たちで修理するというように、体裁をあまり気にしていないところが逆に技術を尊重する工場として信頼を集めているのかもしれない。「つぶつぶでんぷん」の割合は全体の1割であり、8割が一般のでん粉である。当然、新しい設備にしなければならないが、順次設備を充実させて投資が負担にならないよう配慮していたものと思われる(図2)。残り1割のでん粉は「つぶつぶでんぷん」を製造する過程で軽いでん粉も出てくるので、一般のでん粉とブレンドし、かまぼこなどの水産練り製品用として出荷している。いろんな工夫をしており、総じて無駄がないという印象がある。でん粉の販売は昔からのつながりがある問屋を使うが、顧客には直売もしている。
でん粉製造で欠かせないのは水である。以前は7mの深さで良質な水を汲み上げられたが、平成19年(2007)に濁りが出て、使えなくなってしまった。そこで岩盤をくり貫いて100mの深さに掘削すると上質な伏流水が使えるようになった。二価鉄の水でカルシウムやマグネシウム系であることから「つぶつぶでんぷん」には好条件といわれている。二価鉄の水で精製したでん粉はその特性として、熱湯中で緩やかに膨潤化する傾向があり、好ましいとされている。

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