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多様な農業のそれぞれのかたち

「7次化」という農業の形/顧客が欲しい形で生産・販売するカスタマイズサービス


現在、厚木店はローズガーデンを併設した店になり、経営も父親から剛氏の兄へと代替わりしている。昨年は、日本一長いつるバラのカーテンとして「かながわ観光大賞優秀賞」も受賞した。
2号店は20年ほど前に剛氏の叔父が相模大野(相模原市南区)の国道16号沿いで開業。この店もすでに代替わりした。自社生産の「みがき玄米」(ぬか部分に傷を入れてふっくらと炊き上げる)や、同じく自家栽培した梅の特製ドリンクは、いずれもハンバーグに合うと好評を博しているようだ。
3号店の開業は2012年。こちらは剛氏が自ら手がけた(当初は二本松店、昨年相模原インター店に改称)。「食育体験のできる農園レストラン」「食と農の懸け橋」をキャッチフレーズに掲げている。
以上3店舗は、いずれも(有)笹生農園が経営する。なんらかの形で農業を取り込んでいる点は共通している。ハンバーグやステーキなどの肉料理を中心に据えている点も同じだ。しかし、フランチャイズ店ではない。各店舗はそれぞれ独立採算制で、コンセプトもメニューも異なり、独自路線を歩んでいる。
剛氏が飲食店経営に乗り出したのは、じつは栗の里が最初ではない。まずは25歳で厚木市街に自分の店を開いている。栗の里とは違い、駐車場もなく食べるだけの15坪ほどの店だった。
その仕事を続けながら、将来構想は次第に膨らんでいった。なじみのある農業をもっと活かした飲食店ができないか。地元の農業塾に通い始めたのは開店5年後だった。農家生まれとはいっても、すでに剛氏が生まれる前から実家は専業ではなくなっている。農業の基礎はこの農業塾で学んだ。
構想を実現するためには市街地の店では難しい。新天地を見つけたのは厚木に店を開いてから7年後だった。栗の里二本松店が営業を始めるのはさらにその3年後となる。
さて、7次化とは具体的にどんな形なのか。いろんな側面が考えられる。まずは相模原インター店で無料サービスしているダイコンを例に取ってみよう。もちろん相場変動はあるが、生産者価格は1本換算すると何十円といったところだ。5000本を売ったとしても10万円くらいにしかならない。つまり、売ってもタカが知れている。
「コスト面ではトータルに考えています。仮に農産物を販売して10万円の収入があったとしましょう。一方でレストランの宣伝費などに10万円かければ差し引きゼロ。ところが、農産物を無料で配れば、それ目当ての飲食客もやってきます。何よりお客さんに喜んでもらえる。だからこそ家庭内でも話題になり、口コミでさらに広がっていく。メディアに取り上げられる機会も増える。この効果は宣伝費10万円よりはるかに大きいですね」

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