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多様な農業のそれぞれのかたち

「7次化」という農業の形/顧客が欲しい形で生産・販売するカスタマイズサービス


松原氏は2012年12月、共同出荷のための菜々屋を立ち上げた。リバー・ファームの野菜を直売するうちに、1品目だけでは営業活動が難しいと感じていたからである。だが、品目を増やせば生産効率は下がり、農薬の使用を誤るなどのリスクは高まる。
松原氏がそんな悩みを抱えていたとき、ちょうど同じ悩みを持っていたのが、農業の経験や経営の考え方が似通った徳島県内の同年代の若手生産者たちである。
「1品目で営業するのはしんどい。でも品目を増やすことは難しい。それならば、みんなでネットワークをつくるのが一番きれいな形だと考えました。多くの品目をまとまった量で共同出荷すれば、販売交渉がしやすくなります」
菜々屋を立ち上げた役員メンバーは全部で5人。松原氏を含む4人は、それぞれ自社農場の経営者でもあり、菜々屋の看板を背負った営業マンでもある。そのメンバーの一人である大沼玲哉氏(32)は、販売先と生産者との間に立って受注や出荷の管理を担当している。
菜々屋の経営の仕組みはこうだ。まずメンバー4人がそれぞれ自分の農産物の営業活動をしながら、菜々屋が抱える会員50軒の農産物も一緒に提案する。引き合いがあると大沼氏がバイヤーと会員との間に立ち、生産から出荷までを調整する。菜々屋とバイヤー、菜々屋と会員がそれぞれ契約する。収量が落ちた場合でも出荷量が不足することがないよう、会員は契約量の1.5倍の収量を計画して生産する。会員はそれぞれ市場や農協、直売所など自分自身の販路を持っており、収穫の残りはそのなかで調整している。このように営業活動によって販路が決まってから、その受注量に合わせて生産量を計画している。

【顧客が欲しい形で生産・出荷するカスタマイズサービス】

つまり、菜々屋は完全受注生産だ。受注したら必要な量の種をまくというイメージの体制を取っている。そうする理由は、品目ごとに、規格や品質、梱包形態も顧客が欲しい形にカスタマイズして渡すためだ。
たとえば、コマツナの注文が入ったとしよう。丈は何cmなのか、1束100gなのか200gなのか、1箱何束入りにするのか、キャベツなら玉サイズはどうするか、1箱何個入りか、店頭の見栄えをよくする外葉はつけるのか、つけるなら何枚つけるのかなど、それぞれの顧客と相談のうえできめ細かに決めていく。顧客ごとに商品規格をつくるというカスタマイズサービスの考え方である。規格以外にもさまざまな相談をしているが、それについては後述したい。

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