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多様な農業のそれぞれのかたち

「7次化」という農業の形/顧客が欲しい形で生産・販売するカスタマイズサービス


内部でも生産状況を細やかに把握するため、週に一度、役員メンバー5人で深夜まで会議を開いて情報交換をしている。さらに、新しい品目を取り入れるため、試験栽培のプロジェクトも随時立ち上げられ、その情報もこの会議の場で共有される。金曜日の18時に始まり、ときには決定事項が多く、午前3時になってしまうこともあるという。

【顧客が求める商品には価格も含まれる】

カスタマイズサービスは規格のほかにもある。ここからの話は、菜々屋で生産から出荷までの管理を担当している大沼氏が寝不足になる理由だ。引き合いのあった新規顧客との交渉ごとは多岐にわたる。
一つめは品質である。菜々屋は、出荷する作物の品質の統一に取り組んでおり、会員に対して硝酸イオン、抗酸化力、糖度、ビタミンCなど野菜の成分分析のサポートを行ない、会員が同じ方向を向いて生産できる仕組みを整えつつある。
また、硝酸態窒素の低減も品質向上の一つである。徳島県では地鶏「阿波尾鶏」の養鶏場から出る鶏糞を堆肥化して有機肥料として地域循環させる仕組みが整っている。物流費がかからないため、化学肥料よりも安価で入手できるという。菜々屋も大手養鶏会社から有機肥料を購入し、元肥として使用している。それだけで硝酸態窒素の濃度は落ちるが、もっと手間とコストをかければ、さらに落とすことができる。 
しかし、顧客が大口の量販店の場合、品質を極めることよりも安定量を出荷することのほうが優先される。
「品質というのは捉え方が難しいものです。コストが高すぎて価格が上がってしまうとそれはお客さんの満足を得られません。私たちは、価格も含めてお客さんが一番満足できる、つまり買いやすくて、食べてもらえるものが品質の高い商品だと捉えています」
二つめは物流である。通常、(株)阿波有機という協力会社に委託し、会員からいったん集荷して梱包した商品を、輸送会社に委託して輸送している。小口の場合は混載の輸送会社や宅配を使用する。どの方法を取るか、とくに新規顧客の場合は入念に相談する。わざわざコスト高になる方法を取らなくても、お互いにとってメリットがある方法があるかもしれないからである。
たとえば、直接会員の圃場に取りに来ることができる顧客もあれば、自社トラックが商品配送のついでに立ち寄って引き取ることができる顧客もある。また、もう少し取引量を増やせば輸送費が割安になる場合もある。そういった細かなケースを調整するのも大沼氏の役割である。輸送コストは価格に大きく影響するため、両者にとって一番良い方法を選択することも大切なサービスになっている。

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