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成田重行流地域開発の戦略学

大消費地を活用した販路開拓(中)


何が問題かといえば、たとえば商品のパッケージが汁に濡れていたり、封がきちんと閉まっていなかったりする。あるいはパッケージやラベルのデザインが洗練されていない。いずれも地元の直売所や道の駅などで販売してきた加工品、そのものずばりが送られてきたわけである。
「地元の人たちに売る分にはこれでいいんでしょうけれど、さすがに伊勢丹に置いてもらうのに、そういうわけにはいきませんよね」と阿部さん。

伊勢丹に売るという教育
最高クオリティのために

とまれ、この程度のことで立ち止まっているわけにはいかない。阿部さんは、豊前市から加工品が届くたびに、商品上の問題点をクローズアップするような写真を撮影。それらの写真をそれぞれの加工業者に送り返した後、電話や手紙でどう改善すればいいのかを伝えた。
といっても、一度にあれこれ指摘すれば、加工業者も面倒になって実験に参加するのをやめてしまう恐れがある。だから、1回につき1つの問題点を指摘してはそれを克服してもらうことを繰り返し、ゆっくりと時間をかけながら、しらみつぶしに克服するという段取りをとった。まことに根気のいるやりとりである。
やがて完成したのは、いずれも東京都内で栽培した「内藤とうがらし」を素材にした「ゆずこしょう」「内藤とうがらし粗挽きウインナー」「内藤とうがらしパンチェッタ」「柚子胡椒ソース」……。ちなみに、柚子胡椒というのはトウガラシを粗く刻んで、柚子の果皮と塩を入れてすりつぶして熟成させた、九州では一般的な調味料。九州ではだいたいどの家庭にも常備されているものだ。
成田さんは、地方の人たちが大消費地で売ることの意味について、次のように語っている。
「とくに伊勢丹は国内で最高のクオリティを求めてくる。表示や品質、アレルギー、農薬の履歴など、実にいろいろなハードルがあるわけです。だから伊勢丹に出すことは豊前市にとっては最高レベルの教育といえます。それでいて売れないと駄目。生半可な気持ちじゃ、できないんですよ。地域に言いたいのは、伊勢丹のような世界トップの店でも扱ってもらえる商品づくりを目指せということ」
豊前市の加工業者は、それぞれの商品に「内藤とうがらし」「新宿」「江戸東京野菜」という3つの文字がひとつに書かれたシールやマークを貼った。これらの商品は、冒頭に紹介したフェアの期間中だけでなく、おいしい水大使館が新宿を中心に開催しているイベントでも販売した。

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