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傾斜円板型の豆類播種機は、種子を円板の穴にすくい取ってから余分な種子を排除するのに、傾斜を利用して自然に落下させている(図1・2)。スクレーパーを使えば、どうしても無理があり、種子を傷つけることが多い。それを嫌ったのである。
豆類の播種機を馬鈴薯用に大型にし、円板の穴に種子をすくう方法を検討したが、馬鈴薯は豆類と違って表皮が柔らかいので、落下位置まで種子を移動する際、下板に接触している部分に摩擦で傷がついてしまう。そこで、円板の縁にバケットを取り付けて種イモをすくう方式とした。バケットは種子の落下位置に来たところで、下の支え棒から外れて下がるようになっている。傷はまったくつかず、正確に播種できる。巧みに輸入機の一部の技術を参考にしながら日本風の技術に整えて実用化している(写真3~6)。
ポテトプランターが開発されて省力的に精密播種ができるようになり、この技術はそれなりに評価された。次の課題は種イモの切断であった。10a当たり約5000個の種イモを必要とするので、手切りに4時間、1人半日の仕事である(写真7)。馬鈴薯の栽培面積が増えるとこれをなんとかしなければならなくなった。オランダでは若種イモの栽培法が確立し、小さい種イモを切断しないで使っているとの情報が入った。それだけを栽培する技術など存在するのであろうか、その小イモは収量や品質には影響ないのであろうか多分に疑問が残った。
オランダに行って現地を調べてみると、日本人は若種イモの栽培法を曲解していることが判明した。つまり、ウイルスフリーの種イモを栽培するについては、アブラムシがウイルスをまん延させるので、この完全防除が不可欠である。しかし、完全防除は困難であるので、アブラムシが飛翔してくる時期になんらかの方法で茎葉を除去してしまえというのである。茎葉を早い時期に処理してしまえば、若種イモにならざるを得ない。
旅行者の瞥見というべきか、ここを日本人は曲解していた。オランダ人によく問いただすと、小イモだけを生産する技術などあり得ないというのである。茎葉を処理することによって、小イモは多少増える程度であると明言した。それではオランダでは小イモだけを使っていたという報告があるけれどもそれはどうしたことかと聞くと、オランダは人手が少ないので、小イモだけを選別して使う例が多いだけのことである。大きい種イモは人手のあるイタリアなどに輸出しているということであった。
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村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
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