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成田さんが目を付けたのは、唐人町の地域には江戸時代に活躍した本草学者にして儒学者の貝原益軒の墓所が存在すること。貝原はその代表作『養生訓』で国内の文献では初めてトウガラシを紹介している。
成田さんは県議から相談を受けた際にぴんとひらめいた。日本で初めてトウガラシを紹介した貝原の眠る唐人町の地域と食べる文化が最初に根付いた新宿には、豊前と新宿の連携をそのまま当てはめることができるのではないかということだ。唐人町でも内藤とうがらしのオリジナル商品をつくり、新宿で売り込めるのではないか。
成田さんは豊前市での取材の翌日、さっそく唐人町の商店街の組合員たちに会いに向かっていった。これからどうなるかが楽しみだ。
内藤家のルーツ
伊那地方とも連携
じつはもうひとつの連携ができつつある。それは内藤とうがらしの発祥ともいえる長野県伊那地方とのつながりだ。
本誌でも「農村経営者」としてたびたび登場している、同県飯島町の田切農産で代表を務める紫芝勉さんが今年から、成田さんの依頼を受けて内藤とうがらしの加工品づくりなどを試みる予定である。
ところで蛇足かつまったく個人的な話だが、筆者は大学卒業後に入社した新聞社で最初に赴任した福岡市で、貝原益軒の墓所の近くに10カ月弱住んでいたことがあった。さらにいえば、長野県伊那地方は筆者の父方の祖母の出身地。またすでに触れたように、豊前は母方の故郷である。なんとも奇妙なめぐりあわせを感じずにはいられなかった。
そうした不思議な縁をもたらした成田さんからあるとき、彼が60年以上前に通学していた杉並区の小学校が筆者の卒業校であると聞かされ、また驚かされた。もちろん単なる偶然であり、なんということもない話であるのだが。
とにもかくにも内藤とうがらしを巡る今回の旅では、人やモノのつながりをたどるとともに、それらが予想外に結びつき、形をなしていくことを知ることになった。
加えて、人やモノをつなげる成田さんの静かなる情熱と行動力に改めて感銘を受けた。
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