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土と施肥の基礎知識

土の元素組成と粘土鉱物

1.土の元素組成

本連載の後半では「土づくり」や「土壌診断」について記すが、その中で「土の健康は人の健康と同じ」というフレーズを何度も繰り返す。人は生物で土は非生物と、一見まったく違うように思われがちだが、両者には大きな共通点がある。人の体を構成する元素は多い順に酸素・炭素・水素で、一方の土は図1のように酸素・ケイ素・アルミニウムで全体の約90%を占める。酸素を最も多く含むことも両者に共通するが、重要な点はそれぞれ2番目の炭素とケイ素だ。
高校の化学で勉強したメンデレーエフの元素周期律表を思い出してみよう。原子番号6番の炭素の真下に原子番号14番のケイ素が位置している。元素周期律表の縦の列は族と呼ばれ、同じような性質の元素が配置されている。炭素とケイ素は同じ炭素族の元素で、いわば親類である。どちらも4本の手(原子価)を持ち、それらの手をつなぎ合わせる(共有結合)ことで高分子化合物を作ることができる。
人は炭素を中心とする高分子有機化合物からできているのに対して、土の主成分である砂と粘土はケイ素を中心とする高分子ケイ酸塩鉱物からできている。昨今では生物の遺伝子組み換えがブームだが、さらに科学が進歩して元素入れ替えが可能になると、人体中の炭素をケイ素に入れ替えて、熱や薬品に強いシリコーン人間ができるかもしれない。
なお、シリコーンとはケトンと呼ばれる有機化合物中の炭素をケイ素に入れ替えて作った合成樹脂(シリコーン樹脂)で、耐熱性や化学的安定性に富むため、美容整形などにも利用される。また、木の化石として知られる珪化木とは、植物中の有機物が地中でケイ酸に置き換わった物質である。
土には自然界に存在する92種類の元素のほとんどが含まれると考えられるが、少なすぎて分析できないものも数多い。図1に示す9種類の元素のほかに、チタン、マンガン、リン、イオウ、窒素、水素を主成分元素、それ以外を微量元素という。 
軽量で耐食性に優れる金属であるチタンが主成分元素に含まれていることはあまり知られていない。微量元素には、植物生育に必須な微量要素(亜鉛、銅、ホウ素、モリブデン、塩素、ニッケル)が含まれる。鉄とマンガンは植物栄養学では微量要素に該当するが、土壌学では主成分元素に分類される。
また、微量元素の中で有害元素に分類されるカドミウム、ヒ素、水銀などは人工的に汚染されていない土にも必ず含まれる。その含有量をバックグラウンド値といい、水銀で0.1mg/kg以下、カドミウムで0.2~0.3mg/kg、ヒ素では10mg/kg程度に達することもある。土から有害元素が検出されたら直ちに汚染土壌と見なすのは誤りで、バックグラウンド値と比べて汚染の有無を判断するべきである。

2.粘土鉱物は土の屋台骨

土の保肥力や肥沃度に大きく影響する粘土鉱物は、土の屋台骨ともいえる構成成分である。人の体を支える骨がリン酸カルシウムを主成分とするのに対して、土の屋台骨はケイ酸のほかにアルミナという物質からできている。

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