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実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

第十七章 生産原価と生産技術の改善(3)投下時間当たりの労働生産性

アルバイトの賃金

無料の仕事求人誌を久しぶりに眺めてみた。目的は2つある。我が家の経営を手伝ってくれるパートさんの賃金を見直すためと、労働の対価の実情を知るためだ。北海道の最低賃金は昨年改定され、時給は764円となった。情報誌に並ぶ人材募集の広告は、時給800~1000円の仕事が中心である。
農業関連の仕事も見つけた。農業専門の人材派遣会社の仕事だが、同じく800円強である。我々農業者が人材派遣会社に仕事を依頼した場合に支払う時給は、1200円なのだが――。改めてピンはね額の現実を知ることができた。
次に都道府県別の改定最低賃金を調べてみた。岩手で695円、東京は907円、大阪は858円、沖縄693円となる。全国平均は798円であるから、多くの地方都市は全国平均を下回る。
少し脱線するが、中学生のころから大学を卒業するまで実家にいた私は、サッカーや農作業の手伝いの合間を縫って、いろいろなアルバイトをした。最も長く続いたのは某コンビニ店での仕事である。もう20年以上前だが、10~3月の6カ月間を約4年間、夜勤が主だった。感動したのは、その時代にレジ裏で稼働していたPOSシステムである。PCがオンライン化され、商品の販売情報が逐次経営管理に活かされていたのだ。購入者の年齢や性別、天気予報、在庫、売上高など、リアルタイムに集計を見ることができる。私を雇ってくれたオーナーは、地方では一般の商店のままでは生き残れないと気づき、いち早くコンビニ経営を始めた先駆者的な経営者で、考え方が大好きだった。
POSシステムに感化された私は大学卒業後、米国に修行と称する旅に出て、帰国したら実家でなんとなく近代的な農業がやりたいと、いま考えると意味不明な目標を掲げた。が、その計画にはもちろん即反対された。大学のゼミの先生と父の言は、「技術の勉強ができて、簿記や経営管理を教え、喜ばれる仕事がある。月給ももらえるぞ」「お前は、そのまま農家をやったら、家をつぶすぞ」だった。すべてを鵜呑みにしたわけではないが、修行はやめ、普及指導員の資格試験と公務員採用試験を受け、間違って合格することとなる。道庁からも一応、給与や待遇の説明があったが、同級生があれだのこれだの騒いでいる横で、私はその類いの話にまったく関心がなかった。
学生時代のアルバイトの目的は単純で小遣いが欲しいだけだったが、雇われる前に最低賃金など考えたことは一度もなかった。どの仕事もアルバイトとはいえ、慣れてくるにつれ、次第に面白くなる。成功するとほめられ、うれしい。意外と単純な発想で働いていたように思う。
結局、普及員に採用されたときの初任給は月給手取り13万円ほどで、学生時代のアルバイトより稼げないと感じたが、1日は24時間あるというのが持論で、不満はまったくなかった。それは仕事が面白かったからである。仕事とは本来そういう性質のもので、給料や休みがどうのというより、面白さに優るものはない。面白いから上達するし、上達するから結果的に稼げることになる。雇い主にしたら、なんとありがたいことであろうか(笑)。振り返れば微笑ましい話である。

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