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イベントレポート

各地の小さな動きがこれからの社会を創る/農村経営研究会2016年第1回定例会


北九州市で始めた
リノベーションによるまちづくり

徳田氏は大学の外に出て、自身も小さな取り組みを重ねてきた。そのうちのひとつ、「リノベーションによるまちづくり」は、いままでのないものねだりから、あるもの探しをして小さなものを最大化する活動である。大きな都市開発をするのではなく、これらのストックを活用して地域の人々が自分のこととして小さく始め、それをネットワークしながら、全体に広げていくというイメージだ。
地域のストックを活用しようと考えた背景には、建築業界で需要と供給とが乖離してしまった現状を踏まえてのことだ。日本の総住宅数は1968年には総世帯数を上回ったが、その後も年間で最大170万戸を建て続けている。この数字は欧米と比べても大きい。つまり、いかに日本が新築市場に支えられてきたかということを示している。結果、供給が需要を上回り、現在13.5%が空き家になっている。
徳田氏は地元の北九州を拠点に、「リノベーションによるまちづくり」というコンセプトのもとで二つの取り組みを始めた。ひとつはリノベーションスクール、もうひとつは北九州家守舎という法人活動である。
北九州市がかつて八幡製鉄所によって栄えたことは有名だ。最大約7万人の従業員を抱えていたことがあった。しかし、現在は大きく減少し、約2800人にとどまる。これは生産性向上の効果が上がった結果でもある。現代は、どの事業分野でも大きな事業ほど雇用が減っていく現象が見られる。
そこで徳田氏は小さい事業をたくさん興し、よりたくさんの雇用を生むような仕組みを採用しようと考えた。まず北九州市と連携し、小倉魚町を中心とした遊休不動産を活用し、雇用創出を目指すという小倉家守構想をつくった。見方を変えれば、いまある空き家、空きビル、空き地といったストックは「町のポテンシャル」である。それらを活用してサブカルチャーや娯楽文化なども含め多様な産業を集積させていこうというものだ。
それを具現化するための取り組みのひとつがリノベーションスクールである。このスクールは、構想のプラットフォームとして持続的にプロジェクトの創造と人材を輩出していく役目を担う。北九州では半年に1回、これまでに10回開催している。いまでは他地域でも展開している。
リノベーションスクールの仕組みはこうだ。受講生は全国から募集する。30歳前後の建築や不動産、農業、デザイナー、行政などの関係者が多いという。講師は建築業界などの最先端で活躍する人たちが務めている。4日間の受講期間中、受講生はいくつかのグループに分かれ、実在する遊休不動産の再生事業計画を練る。最終日に不動産オーナーをはじめ、地域のキーパーソンたちに計画を提案する。

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