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提言

飼料用米から子実トウモロコシへ 地域の未来を見据える真の耕畜連携のかたち

いまでは手厚い交付金支援のある飼料用米生産だが、佐賀県鳥栖市で挑戦がスタートしたのは、その支援制度が始まる前のこと。ここ鳥栖では耕種農家と養鶏業者が同じ考えを共有する仲間として集まり、試行錯誤し、毎年新しいチャレンジを続けてきた。その挑戦をレポートする。文/北川祐子

きっかけは飼料用米の取引

佐賀県の東端に位置する鳥栖市。ここに、耕種農家と養鶏業者が有効な連携事例がある。持続可能な栽培品目を求める耕種農家と、糞尿をうまく処理したい養鶏業者とが互いのノウハウを高め、その連携を強化してきた。
(株)ヨコオは佐賀、大分、長崎の3県の養鶏場で年間450万羽の肉用鶏を出荷する食肉加工業者である。「みつせ鶏」「ふもと赤鶏」というブランド鶏を生産し、飲食店も自社で展開している。
同社が耕種農家の松隈利生さんに飼料用米生産の話を持ちかけたのはいまから8年前。きっかけは、ヨコオが飼料に用いるトウモロコシの代替品として、飼料用米の活用を模索したことだった。当時、まだ飼料用米への公的支援はなかったが、市役所の仲介で有志を募り、耕畜の異業種が連携するかたちでの取り組みが始まった。
松隈さんのほか、手島健次郎さん、立石高行さんも早くから飼料用米生産に取り組んだメンバーだ。3人は異口同音に「ほかと同じことをやってもしょうがない」と唱える。飼料用米の生産を始めたのもその考えがあってのことである。松隈さんを中心に仲間が集まり、いまでは45軒の耕種農家と籾米にして年間2000tを取引するまでに成長した。ベースとなる飼料にこの籾米を自社工場で配合し、飼養期間の3分の2に当たる仕上げ期の鶏に給餌している。

耕種農家の選択肢を広げ、
養鶏業者の悩みを解決

この飼料用米の取り組みは二つの恩恵をもたらした。一つは、耕種農家の作付けの選択肢を広げたことだ。それも同じ地域のなかに相対取引でのニーズがあり、政策誘導によらない。そして、もう一つはヨコオのつくる鶏糞堆肥の利用である。
畜糞堆肥を使う人はよくわかっていると思うが、ひと口に“堆肥”といっても、生糞に近いものからしっかり完熟させたものまで、その品質はピンキリだ。畜産農家にとって糞尿処理は手間とコストが膨大にかかるお荷物部門であることから、本腰を入れて取り組むことは少ない。それゆえ、品質のばらつきが大きく、利用する農家側のニーズに合う堆肥がなかなか作られず、堆肥の適切な利用が進まない原因の一つになっている。

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