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次に旬別の労働時間を見てみる。北海道で、収穫作業が共同の体系では、9月中旬の播種時期が労働のピークである。秋まき小麦は機械体系が完成している作物である。そのため、作業幅を広げたり作業速度を上げたりと、作業機の更新を進める以外に、労働時間を短縮する方法を見つけることができない。
この2つの表が示す小麦の特徴を頭に置きながら、2つの改善プランを練ってみた(図2)。本来なら経営費も若干増減するのだが、頭のトレーニングなので、詳細な設定はしないこととする。なお、減価償却費は標準的な2万円として、部門の推定利益(所得)とした。
このシミュレーションによる標準的な経営では10a当たりの利益は1万6462円である。これを10a当たりの労働時間で割った投下労働時間当たりの利益、すなわち時給は7268円である。
まず、1俵(60kg)増収できたとしよう。この場合、どう変わるだろうか。増収分の収入が増えて、10a当たりの利益は2万382円となり、時給は8999円と約1700円アップが見込まれる。
次に、コスト減をなんとか5%実現できたという場合を想定してみた。こちらは、10a当たりの利益が1万9036円で、時給は8404円と約1100円アップとなる。
増収にしてもコスト低減にしても、土地生産性、労働生産性ともに改善の見通しが立っている。しかし、使用する生産資材のコスト低減はそう簡単なことではない。機械コストも規模拡大が視野にあるなら、機械・施設投資は増加傾向になるので減価償却費も減らしにくい。
ここでの結論としては、小麦などの穀類、とくに経営安定対策下での販売においては、単価アップは期待できないし、コスト低減も難しい。生産性の改善に向けた思案と行動は、増収を軸に据えると良い。増収技術を模索し、工夫を凝らすことがより求められるというわけだ。
トマト部門の改善プラン
同じようにトマトの事例から施設園芸作物の生産性改善案を検討してみよう。
表3の作物収支だが、種苗、肥料、農薬を含む資材費の金額が大きいので、まずここに注目したくなる。とくに種苗費と生産資材費の合計は約40万円で、経営費の50%を超える。しかし、これは意外に低減できそうにないと私は踏んでいる。
その理由は二つある。一つに、使用している資材の多くはこれまで培ってきた栽培技術に裏付けされている。これを単に安い資材に替えればいいというわけにはいかない。新たな資材に変更することがあっても、コストも検討はするが、製品の出来栄えを重視し、高品質を追求する方向に舵を取るといえよう。
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齊藤義崇 サイトウヨシタカ
1973年北海道生まれ。栗山町在住。昨年、普及指導員を退職し、実家の農業を2014年から営む。経営は和牛繁殖、施設園芸が主体。普及指導員時代は、主に水稲と農業経営を担当し、農業経営の支援に尽力した。主に農業法人の設立、経営試算ソフト「Hokkaido_Naviシステム」の開発、乾田直播の推進、水田輪作体系の確立などに携わる。
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