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新・農業経営者ルポ

農のテーマパークを世に問う 脱サラ「起業家」の冒険

箱根西麓の中山間地に点在する標高差300mの圃場でバラエティ豊かな野菜を栽培するフードカルチャー・ルネサンス。代表の鈴木達也の原点は家庭菜園だ。野菜づくりから料理して食べるところまでワクワクとドキドキのネタに事欠かない。創業2年目を迎え、農場は集客力を高めるテーマパーク化を推進し、農と食文化にまつわる体験を売るビジネスモデルに磨きをかけている。 文/清水泰、撮影/加藤祐子、写真提供/フードカルチャー・ルネサンス

「農作業を手伝いたい」
顧客が発した意外なニーズ

芦ノ湖から直線距離で6km、眼前には裾野から広がる富士山、眼下に駿河湾を一望する箱根西麓地域。ミネラル分豊富な関東ローム層の赤土に箱根山麓の火山灰が適度に堆積し、緩やかな傾斜地をなす。保肥力と水はけを併せ持つ土壌と比較的涼しく寒暖差のある気候から、野菜の適作地として知られている。
クルマで山道を上る途中の我々を鈴木達也が出迎えた。軽トラに先導され、標高550mにある圃場に駆け上がった。ここはもともと牧草地だったが、高さ2mのセイタカアワダチソウが生い茂る遊休地と化していた。5年かけて開墾し、今年から稼働を始めた。
鈴木は現在、勾配のある圃場をうまく活用して年間130品目300品種の野菜を生産し、50軒のレストラン、66人の個人顧客に野菜の定期便を配送している。
グレーの作業着姿で案内する鈴木の両手首には、リストバンドが巻かれていた。聞けば暗がりの中で草刈りしていたところ、深い窪みに逆立ち状態で落ち、両手首を骨折したのだという。取材で訪れるわずか3週間前、4月末の事故だった。
鈴木が「この忙しい時期に」と落ち込んだのも束の間、1週間足らずで現場復帰したが、フルに作業できる状態ではない。見かねた専従スタッフの高橋日菜子が、自主的に自前の軽トラを運転して鈴木の負担を軽減した。怪我の功名はスタッフの自覚促進にとどまらず、新たな付加価値の創出につながった。
「Facebookで怪我したという報告を見て心配した定期便のお客さんの何人かが、自発的に農作業を手伝いに来てくれたんです。最初は手の不自由な私を助けたい一心なのかなと思っていたんですが、どうやらそれだけではないようで――」
土に触れること、農作業のお礼にとその場で摘んだ野菜を夕食のサラダにして食べること、一連の行為そのものが彼らにとって立派な「エンターテインメント」になるのではないかと思いついた。
その仮説を鈴木は手伝いに来てくれた顧客にぶつけてみた。農場での各種イベントやFacebookでのやりとりを通じて気心が知れている彼らに「お金を払ってでも農作業をしてみたいですか」と尋ねると、帰ってきた答えは「やりたい」だった。 

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