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特集

農村経営者とは? 地域自立を目指す試み

2014年2月、農業技術通信社は「農村経営研究会」を発足させた。地域の風土・文化に対する強い誇りと愛着を持ち、事業経営者としての才覚を持つ「農村経営者」。研究会では、他地域や企業とのネットワーク構築を含めて、地域の自立を目指す活動をバックアップしてきた。今回の特集では、農村経営者たちの新たな事例も交えながら、「いまなぜ農村経営なのか」を問うていく。

What’s01
あるがままの農村が人を呼び込む
「武石で成功しなければ全国どこでもうまくいかない」
小林一郎 長野県上田市「信州せいしゅん村」むらおさ

かつてトマト生産日本一を誇った村があった。長野県上田市旧武石(たけし)村。ブランド名「まるたけトマト」。「武」の字を丸で囲んだ商標だ。ハウスではなく露地栽培、年間降水量800mmという全国屈指の少雨地域。その気候を活かした「基幹産業」でもあった。桃太郎が全盛となる以前、昭和30~50年代にかけての話である。復興の動きがないわけではないが、現在は「幻」に等しい。
そんな武石村で、小林一郎さんはずっと暮らしてきた。信州せいしゅん村は、2000年に小林さんが設立。以来、農業では食えなくなった農村に人を呼び込む事業を続けてきた。いまでは農村活性化活動のモデルとさえいわれるようになっている。
「最近、農観連携という言葉がよく使われますね。一般的には農業と観光の連携という意味でしょう。農商工連携の農も同じ。でも私は、農業ではなく農村と観光の連携だと考えています。農村にあるのは農業だけではありません。環境や景観の保全も含めて、21世紀型農村を模索してきました」

【農業で食えなくなった
村が生き残る手立て】

小林さんを訪ねたのは6月9日。雨が少ないはずの村が、この日はほぼ一日中雨に見舞われた。新緑に覆われた周囲の山々が雨と雲で煙る光景も美しい。
「昨日までは、植え付けた食用ホオズキなどの苗に水をやってました」
「真田丸」(NHK大河ドラマ)景気に沸く上田駅から武石の入口までは車で約30分。ここまで来ると「真田丸」の影響などかけらも見られない。武石川沿いに広がる谷あいの田畑、点在する民家。武石川は、昨年1月から放映されたauのCM「新しい英雄」シリーズのロケ地にもなった。松本方面へ抜ける道を登っていけば美ヶ原に至る。美ヶ原の大半は旧武石村の域内だ。
武石には25年ほど前からイオンのショッピングセンター(ジャスコ武石)があった。ここには旧村内商店の多くがテナントとして出店。しかし2010年、イオン撤退に伴って廃業のやむなきに。
現在、旧村内に残る商店は2、3店しかないという。もちろんスーパーなし。コンビニ1軒(ただし旧丸子町内の境界部)。日常的な買い物は、主に市内丸子地区に出かけることになる。
しかも、丸子までのバスは一日4便ほど、上田駅までの直通バスは1便のみ。当然、車が使えなければ支障を来す場面が多くなる。
旧村内の人口は減りつづけてきた。1998年の国勢調査では4194人、それが2008年には3786人に。この間、農家数は589戸(うち専業69戸)から514戸(同61戸)に。高齢化率は27.7%から30.9%に上がった。

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