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地域プロデューサーの成田重行氏は、本誌で連載しているように、過疎・高齢化の地域の活性化に取り組んでいる。成田氏は、地域の活性化に必要なのは、唯一性、時代性、連携性だという。つまり、地域の歴史や伝統文化・農産物など、その地域に根ざした他にはない唯一のものに注目すること。それを古いままではなく現代の人たちが好む形に現代的にアレンジすること。そして地域内外の人たちと連携することである。
成田氏は、地域のあるもの探しを「根っこ探し」と呼んでいる。たとえば、成田氏が新宿に復活させた「内藤とうがらし」は、江戸時代の食文化のなかにあった「根っこ」だ。宿場町だった新宿には蕎麦屋が多く、それにかける内藤とうがらしは、当時ブランドとして確立していた。成田氏は、その歴史的背景という無形の価値を新宿区の学校や飲食店など地域に伝えていった。これを「夜明け前の演出」と呼んでいる。食材としてだけではなく、現代の人々のニーズに合わせて観葉植物としても売り出したところこれもヒットした。いまでは、飲食店やデパート、企業、個人まで新宿区の人々が連携している。これは都会の例だが、過疎地でも手法は同じである。
宮城県の伊豆沼農産の代表取締役社長・伊藤秀雄氏は、あるもの探しを起点に農村経営を実践している一人である。伊藤氏は88年、創業とともに農業を食産業に変えようと豚肉加工とレストラン業を始めた。2004年には農村にある資源を活かそうと考え、農村経営に着手した人物である。
地域のなかの価値を見つけるために取り組んだのは、「伊豆沼しゃべり場倶楽部」である。高齢者なら昔の話、若い人なら将来の話、事業者なら事業の話などを茶話会のなかでしゃべり合った。地域の人々と一緒に地域のあるもの探しをしたのである。まず住民自身が自分たちの地域に魅力を感じなければ、よその人にも伝えられないと考えてのことだ。
現在は、「伝え人」として高齢者が活躍できる場を設けたり、家庭の料理を持ち寄るイベントを開催したり、都会の子供たちが地域住民の家に宿泊する民泊の事業を始めたりしている。事業はボランティアではなく、農村産業として、経済的に回る仕組みをつくっていくことが伊藤氏の構想である。
[3]異質な人々とネットワークして価値を生む
農村経営研究会は、異質な人々が出会い、意見を交わし合う場である。本誌編集長の昆はこれを「傍目八目、文殊の知恵」と呼んでいる。本誌でたびたび発信している水田イノベーションのシンポジウムでも、異業種の人々が集うことによって、新たな動きが始まっている。それと同じように農村経営も業種や地域を超えて人々がネットワークを築くことによって、新たなものが生まれていくだろう。
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