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特集

農村経営者とは? 地域自立を目指す試み


鎌田さんはこの活動を通じて、大都市の百貨店との取引をやめた自身の内なる声に行きあたった気がした。百貨店ではあくまで東濃地方の歴史や文化を知らない販売員があくまでも商品を売っているだけだったのだ。一方、東濃地方では地域に愛情を持った社員たちが商品とともにストーリーを売ってくれる。それに共感した客は、今度は知人にその商品の良さを紹介してくれる。だから鎌田さんは従業員にしきりにこう話している――お客さんと農家は私たちの営業マン。
事業が広がったいまも店舗の展開は地元が中心。例外的に東京や岐阜の市街地の百貨店と取引しているが、これは先方が栗菓子に込めた思いを理解してくれたからである。鎌田さんは言う。
「わかる人たち、価値観を共有できる人たちとつながることこそ大切なんです」
地域の人たちが評価してくれるからこそ、農家は恥ずかしい商品をつくれない。品質を上げていった結果、和食の鉄人と呼ばれる道場六三郎氏など全国的に著名な料理人が恵那川上屋と取引する農家の栗を自分たちの店で扱いたいと申し出てきた。鎌田さんは農家をそうした料理人の店に連れていき、自分たちの栗がどんな料理に生まれ変わったかを見せた。また伊勢神宮に献上する際にも、同じように農家を同行させた。
「誰が食ってるかわからせないとダメなんです。農家が自信を持ってつくるようになれば、地元の人たちだって買わなきゃいけなくなりますよね。そういう循環をつくっていったんです」。鎌田さんは栗を通じて地域を経営していったのである。

【農家が自信を持って
つくるから銘菓はできる】

ところで恵那川上屋はどんな栗を調達しているのか。そのことを知るため、筆者が向かった先は恵那川上屋が2004年に設立した農業生産法人「恵那栗」の園地。「超特選」の恵那栗を増産するためにつくった組織である。
「超特選」というのは、恵那川上屋とJAひがしみの東美濃栗振興協議会の下部組織である超特選栗部会との間で設定している最高ランクの栗。従来は「一般」と、その上の「特選」しかなかった。それを恵那川上屋が「超特選」というランクをつくってもらったのだ。部会が丹精して育てるこのランクの栗はすべて相場の3倍の値段で買い取っている。
この栗の特徴はなんといっても通常の倍ぐらいはある大きさだ。契約農家たちは、栗をこれだけ大きくするのに、「超低樹高栽培」という独自の整枝と剪定の技術を実践している。
栗の木は通常の栽培では高さが8mに成長する。しかし、超低樹高栽培ではそれを2.5mに抑える。園地を案内してくれた農家の説明によると、その方法は主枝を亜主枝の分枝しているところで切り落とし、その翌年に骨格枝から発生する長い発育枝を結果母枝とする。定植から15年目以降の樹高は2.5mに抑えられるので、高齢者や女性でも管理が楽である。また枝が横に広がる分、日当たりがよくて樹体が成長するので、栗は自然と大きく育つ。

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