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実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

第十九章 生産原価と生産技術の改善(5)全体像から改善策を練る

経営とは何か、仕事とは何か

つい最近まで常に考え、答えを探していたことが2つある。農業技術のことではない。一つは「経営とはなんだろうか」という問いであり、もう一つは、「人はなぜ仕事をするのか」である。唐突で漠然とした質問事項かもしれないが、お会いした強者の経営者にたびたび投げかけてきた。自分で経営を始めたら答えが見つかると思っていたが、4年目では彼らの足下にも及ばず、日々忙しく過ぎてしまっている。
経営とは何か。普及指導員のころから大勢の経営者とかかわりを持ち、勉強もしていたつもりなので、理屈のほうは一人前である。講習会などで話をしていて一番しっくりくるのは、経営とは新しい価値を生み出すものという考え方だ。
作物の種や苗、土、肥料、農薬、農業機械などの物材は、経営によって農産物となり、商品として販売される。買い手にその価値が認められると、購入され代金が支払われる。市場に商品の価値が認められることで、経営は成り立つと言い換えてもいいだろう(図1)。
通常、「経営が頑張った」とは言わない。経営者や新しい価値を創造している人たちの頑張りが認められて、経営は評価される。経営の発展とはそうした人々の奮闘が報われた結果だと私は思う。
さて、強者の農業経営者たちはこれらの問いにどう答えてくれたのか。予想どおり、その答えは世代によって大きく異なった。
いわゆる大御所たちは、食べるに困った時代を生き抜いた世代である。彼らは寝ないで仕事をするのは当たり前で、理論や概念などを深く考えたことはないし、考える余裕もなく働き盛りを過ごしたという。しかし、実体験や経験から出る言葉には重厚感と哲学があり、勤勉な方が多く、学ぶべき点ばかりである。 
次に団塊の世代、私の親の世代の経営者たちは、まず「農家だから後を継いだ」と口にする。そこに「もれなく借金も継承したので、あの手この手で返済しながら、苦労はあったがここまで生き残れた」と続く。戦後日本の発展とともに生きた世代だけに、農業以外の豊富な仕事経験を持ち、大工や機械整備、土木工事など、プロ顔負けの技術を持つ方もいらっしゃる。技術や簿記、税法、経営など、多岐にわたって勉強され、情報通でもある。ただし、経営も仕事も人に負けたくないと、結局は理屈でない部分もあるようだ。

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