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特集

根深い農産物貯蔵施設問題 ハコモノに巣食う利権


農水省がうまいと思うのは、農業者の地位や名誉をくすぐるところだ。補助金を使って、事業が軌道に乗れば、農林水産大臣賞とかの賞状一枚。与えられた農業者は、それで村の名士になる。
言葉を変えれば、へんてこりんな劣等感を刺激するのがうまい。本当は豊かだったりするのに、田舎に住んでいると、東京にはカネがあると思い込み、ないものを欲しがってしまう。役人はそこに巧みに付け入っていく。
その結果どうなるか。自立心あふれていた人でも、いつの間にか依存体質がしみついてしまう。我々が期待していた若い農業者は何人もいた。でも、その多くが変わっていった。「昨日までのキミはどうしちゃったの」「なぜ誇りまで売っちゃうんだよ」って感じだ。
補助金を出す行政も、受け取る側も、派手なほうにそれていっている。我々もそれに乗っかって痛い目に遭ったこともある。補助金でなんでもできるんだと勘違いしがちになってしまうのだ。
人間のいちばん大きなバイアスは「保身」だと思う。組織のためといいながら、動機は保身だったりする。人類の歴史のなかで、いまだに克服できていない。農産物貯蔵施設においても、この保身が当人は無意識であっても根強くはびこっている。だから、なかなか変われない。難しいところだ。
若い人には一度補助金のない世界を体験させてあげたい。海外、たとえば東南アジアなどに行って仕事をしてみるとかしたらどうだろうか。

【バリューチェーンをどこまで組めるか】

いまや大手スーパーは一種の不動産業になった。テナント貸しというわけだ。逆に頑張っているのは中堅スーパーだ。このことの意味は大きい。成功している地方スーパーを見ると、バリューチェーンをうまくつくっている。
生産者から消費者に商品が渡るまでに、流通過程でいくつもの組織がかかわる。バリューチェーンとは、関係組織間で価値を共有すること。生産者・資材メーカー・流通・小売、各プレイヤーが組んでマーケットを共有する。理念と顧客を共有するといってもいいかもしれない。
もう少し具体的に言うと、以下三つの作業を一緒に行なっている。

(1)フォーキャスティング=マーケットを予測する。
(2)プランニング=生産計画、出荷計画を立てる。
(3)ロールシェアリング=コストとリスクを誰が持つか。

かつて小売が強くなって、日本の流通はおかしくなった。そんな状況に反旗をひるがえしたのがカルビーだ。カルビーは、貯蔵施設に投資するなど、原料生産者をサポートした。民間企業が川上を支援したわけである。

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