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新・農業経営者ルポ

経営者は数字に強くなければならない


補助金を使え(わ)なかったことが
経営体力を高めた

大牧農場では97年以降も投資を続けた。98年の堆肥センターの建設や2004年の空洞センサーの導入、12年の第三定温庫の建設と、作物の収量や品質に寄与するものから出荷量の増加に結びつくものまで幅広く手を打っている。しかし、堆肥センターを除き補助金の恩恵にはあずかっていないのだという。
「地元に5農協の大きな馬鈴薯コンビナートがある手前、申請しても通らないのが実情ですね。ジャガイモは農協に伝票を通すだけでまったく出荷していません」
事務所の横にはジャガイモ用のスチールコンテナがうず高く積まれていた。それはどうなのかと聞くと、これも自己投資だということだった。
「最初はこんなにいっぱい用意できませんからね、少しでも安くする方法を考えましたよ。フレコンが最安ですけど、ぐだぐだして重ねられませんし、後の作業ができません。それで地元の森林組合に頼んで、カラマツ材を使った木製のコンテナを作ってもらったんです。外国にはよくありますよね。そうしたら実際安くて、案外強かったんです。でも、野ざらしだと傷みが早くて、数年もしないうちにスチールコンテナへ切り替えました。ちょうど道内のジャガイモの仲買業者がパンクしだして、それを格安で手に入れて修理してしのいだんです。最近になってようやく新品を購入するようになりました」
こうした経験の数々が結果的に経営者・五十川勝美をより強固なものにしたのは確かだろう。複式簿記の技能をバックに、借り入れや経営資本の蓄積をきちんと実施してきたおかげで、現在はほぼ無借金経営で回っているという。

北海道畑作の一つの道しるべ

じつは冒頭の話には続きがあった。北海道の畑作農業の今後を展望するような内容に通じているため、そのまま掲載したい。
「……まともに地域平均の上位の収量を挙げて常に維持していれば所得が発生しますけど、平均とかそれ以下だとほぼ残りません。そんなことを経営管理をしていた当初に思って、これはやっぱり販売部門でなんとかしないとなということで、ジャガイモや大豆、小豆、長イモを生協(パルシステム)やらでぃっしゅぼーや、大地を守る会などに売り渡す事業を始めました。
それがいま、商系にしろどこもそういう方向に動きつつあるようですね。それによって農家の所得がきちっと安定して経営が続かなければ、結局、原料がそこから出てきません。いろんな原因はあるんでしょうけど、十勝でもどんどん農家がいなくなって、残った人たちで規模拡大してなんとか薄利のところで機械化で乗り切っているのが現状です。それでもまだ農家は減っていますし、今後もさらに減る傾向にあります。私が住む中音更の元南大牧地区なんか、戦後に22戸いたのがついに2戸ですよ。

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