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特集

後継者よ、未来に志を継承せよ ~事業や地位、財産より大切なもの~

世界を見渡しても、農業ビジネスは家族経営の占める割合が多く、世襲によって事業が継承されてきた。しかし、社会の成熟が進み、恵まれた環境下で事業を継承した後継者のなかには、先代の愚痴をこぼしながら自らは挑戦することに二の足を踏む者も少なくない。それは、農業を職業に選んでも、大きな挑戦をせずとも家族をそこそこ養える時代になったからである。2000年に「息子よ! 後継者は君じゃなくてよいのだ」という特集を組んだ。あれからさらに時が進み、時代状況も変わった。後継者は単に事業や地位、財産を継承するにとどまらないはずだ。先人たちの誇りをいかに未来につないでいくのか――。

対談
後継者は自分の事業を継ぐ人だけにあらず
~懲りずに諦めずに、立ち上がっていく意志を持った生き方を伝えたい~

後継者に対する考え方はさまざまだ。財産や事業の継承、これまでにたどってきた歴史、家族構成などの背景も違えば、抱えている問題も異なる。農業界では声高に危機として騒がれる後継者問題だが、ここでは独特の切り口で展開してみたい。農業経営者の誇りを擁護し、人生の道を考えることを提起してきた本誌が伝えたいのは、単なる事業継承にとどまらない後継者のあり方である。人生は作品づくりだと語る高見澤憲一さんを長野県南牧村に訪ねて、話を聞いた。                    (文/加藤祐子)

【何かを創り上げたい
そのために行動を起こした】

昆吉則(本誌編集長) 今日のテーマは後継者のこと、あるいは農業を継がせることです。読者のほとんどは世襲している人たちですが、なかには農業を継がなくていいとおっしゃる親御さんもいらっしゃいます。その意見も正しいと思います。昔は牛か馬か人間の力でやっていたけれど、いまは大きなトラクターや作業機で作業するわけで、昔と同じ数だけ農家がいたら当然余ってしまいます。集落としての機能は別問題ですけど、農業として考えた場合には、ふるいにかかる必要があるかもしれません。あまりに農業は守られすぎてきたので。その部分も含めて、お話をうかがいたいと思います。
さて、高見澤さんは先だって「後継者は事業を継ぐ人だけじゃない」とおっしゃっていましたね。
高見澤憲一 うちは子どもにやらせようという気もないし、そもそも農業を継ぐのが後継者だなんて思っていませんからね。もともと農業を始めて露地野菜を作っていたときから、自分の農地で農業をやっているわけではないので。
昆 高見澤さんの農地は?
高見澤 自家用の米と野菜を作っている程度です。もともと父親が田んぼをやっていて、山の仕事に行ったりしていて、母親は勤めていたので、いわゆる2種兼業農家でしたね。
昆 では、農家という自覚すらなかった?
高見澤 ないですよ。農家の後継者だと思ったことはありません。
昆 たまたまご両親から「親戚の農地があるよ」という話を聞いて、いわば創業して、露地野菜を作り始めたわけですね。

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