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果樹は苗木から育てると、実がなるまでに数年の時を要するが、豊永は初年度の昨年からブドウを収穫し、売り上げを上げることができた。その理由はブドウが植わった状態の畑を借りているからだ。さらに、軽トラックのほか、所有しているのは刈払機、動力噴霧器と剪定用のハサミくらいである。全部そろえても100万円足らずに抑えられるのも、手作業の多いブドウならではと言えそうだ。
すべての作業を一人でこなし、1年目の売り上げは170万円、2年目は270万円。ブドウ畑の生産性を高めることで、さらなる増収を狙っている。冬場の収入源の確保が今後の課題だが、昨年は不足する分について、冬場の夜間等に週7日のアルバイトをして補った。前職に比べ、収入は激減し、労働時間は大幅に増えた。しかし、そのことに後悔するどころか、働きがいに満ちあふれているようだ。甲府のブドウ畑を案内しながら、こう話してくれた。
「ここは甲府からすぐの場所ですが、見渡せる山の上まで全部ブドウ畑です。見事ですよね。でも、高齢化が進んでいて、後継者は少ないです。せっかくこれだけのブドウ畑があるんですから、しっかり管理して残したいです。いま私がここにいられるのは地域の先輩方のおかげなので、しっかり恩返ししていきたいです」 (加藤祐子)
Case3
後継者が誰であろうと
生き残れる
~チルド商品を大切にするコロッケ専門店~
都内にコロッケをメインにした総菜と弁当の店がある。コロッケの専門メーカーは全国にいくつか存在するが、店舗となると皆無に等しいのではないだろうか。
コロッケ専門店の西郷亭は1990年に東京都中野区で産声を上げた。創業者であり、先代の男性(故人)は、都内の一流ホテルやさまざまな飲食店での料理人を経て、当時の小売最大手の子会社に活躍の場を求めて移ってきた人物である。そこに事務職として勤務していたのが後に西郷亭の二代目社長となる和田慶子だった。先代と和田は立場の違いもあり、子会社時代の9年半はまともに話す機会がほとんどなかったという。ただ、和田は先代を尊敬のまなざしで見ていた。
「子会社ではハンバーガーチェーンを運営していて、最終的には400店舗にもなりました。そこで先代は統括者として常務まで上り詰めるんです。仕事に対してものすごくまじめで、勉強家でした。これには逸話があって、昔の飲食店ではゴキブリに悩まされることが多く、どうしたら駆除できるのかと自宅でゴキブリを飼ってその生態から調べたと聞きました。とことん研究して突き詰めるような感覚ですね。その話を耳にしたときはびっくりしました(笑)」
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