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成田重行流地域開発の戦略学

かあちゃんたち主役のレストラン 三重県尾鷲市(中)

三重県尾鷲市で地域開発プロデューサーの成田重行さんが行政や住民とともに取りかかったのはウォーキングコースづくりだけではない。同時に尾鷲湾でとれる海洋深層水や魚介類を活かした温浴施設やレストランの運営に尽力していく。とりわけ「ふつうの主婦」を主人公にしたまったく新しいタイプのレストランはいまや全国に注目されている。 文・写真/窪田新之助
熊野灘に面したリアス式海岸の尾鷲湾。その湾奥に位置する尾鷲市向井の高台に、地域の内外から大勢の人たちが訪れる、木造を基調とした建物がある。1階に海洋深層水の温浴施設「夢古道の湯」、2階にレストラン「お母ちゃんのランチバイキング」と喫茶店「古民家カフェ」を備える「夢古道おわせ」だ。
海洋深層水というのは水深200m以下でとれる海水で、有機物や細菌類、環境ホルモンをほとんど含まない一方で豊富なミネラルを含んでいる。
「夢古道の湯」では尾鷲湾で採取している海洋深層水をすべての浴槽に使う。しかもそれぞれの浴槽には別々の機能を持たせた。たとえば海洋深層水を電気分解で酸性にした湯は殺菌効果、アルカリ性にした湯は保湿効果が期待される。そうした機能が車で訪れる観光客だけでなく熊野古道を歩いてきた旅人の心身を和らげる。

料理の腕を競わせる
輪番制

「お母ちゃんのランチバイキング」もまた際立った個性を有している。尾鷲ならではの料理で接客するのは、地元に住んでいる「かあちゃんたち」。しかも尾鷲湾の浦にある三つの集落の主婦30人がそれぞれチームとなって、毎週交代の輪番制で店を切り盛りしている。
輪番制を採用した理由のひとつは、三つの集落に料理の腕を競わせること。もうひとつは、同じ尾鷲といっても集落ごとに異なる料理が存在する。そうした豊富なメニューを提供することで、客を飽きさせないため。最後のひとつは、主婦が無理のない範囲で仕事ができるようにするため。3週間ごとの当番であれば、家事と両立させるのも難しくはない。
そういう観点から営業時間も11時から14時までと絞っている。その理由について支配人の伊東将志さんは「かあちゃんたちの本業は家事。とおちゃんのこと、子どもたちのことをしなきゃならない」と笑う。それでも集客数は右肩上がりで、2015年には温浴施設については過去最多の8万人、レストランも3万人を達成している。

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