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【土門「辛」聞】
ゴールド興産事件 農水省の無責任対応
- 土門剛
- 第144回 2016年09月16日
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農産安全管理課の
巧妙なメディア操作
ゴールド興産事件が、その後に起きる太平物産事件と比べて大きく違う点がある。メディアがまったく報じなかったことだ。そのためか一般には事実関係がほとんど知られていない。筆者が事件の概要を知ったのも、事件が起きてから約1年後、7月18日付け河北新報が報じた「有機肥料に化学合成成分 製造販売元を提訴」の記事だった。
「有機肥料として購入した堆肥に化学合成された成分が含まれていたため、有機米として販売・生産できなくなったなどとして、宮城県栗原市や山形県南陽市を含む6道県の有機米生産者が17日までに、製造販売元のゴールド興産(宮城県大崎市)に計約5200万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こした。」
じつは、ゴールド興産についてあまりよろしくない風評は以前から耳にしていた。有機米生産者の訴えと同じような内容だった。堆肥として販売しているのに、高度化成並みの肥料成分(窒素、りん酸、加里)が含まれている。それでいてライバルメーカーの同等品より半値以下で売られていたからだ。やっぱり噂どおりだったという印象が、この記事の素直な読後感だった。
何よりも不思議なことは、河北新報が取り上げた記事を全国紙がフォローしなかったことだ。NHKは、東北ローカルのニュース枠での扱い。いまなおゴールド興産事件の本質部分が理解されないのは、全国紙の追及不足が原因というより、農産安全管理課の巧妙なメディア操作に、農水省記者クラブがまんまと引っかかってしまったというのが実態だろう。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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