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特集

ポスト「減反廃止」戦略 水田経営のこれから


減反政策が存続すると問題なのはこれだけにとどまらない。それは農業の構造調整を遅らせることに加え、既存のコメ業界を衰退させたり、財政負担を大きくしたりすることにある。
初めに構造調整の遅れについて語っておく。振り返れば、1970年に誕生した減反政策は食管赤字を解消するのが当初の狙いだった。戦前からコメの流通は食糧管理制度のもとで国家が預かってきた。生産者から高く買い取って消費者に安く売り渡すことで逆ザヤが発生していた。そしてこの逆ザヤがコメの生産過剰とともに膨らむようになってきた。その赤字を抑えるために始まったのが減反政策である(図3参照)。
ただ、いまではその目的は変化し、減反政策は高米価を演出するために利用されている。一般に、特定の事業者同士が互いの利益を守るために販売価格や生産数量を取り決めることを「カルテル」と呼び、独占禁止法での禁止行為に当たる。そういう意味では、国はいまに至るまで減反政策という「国家カルテル」を続けていることになる。
高米価を維持することは、とりもなおさず小農保護につながる。いまさら言うまでもなく、日本のコメ農家の圧倒的多数は零細な兼業農家である。彼らの平均的な総所得は412万円。ただし、このうち農業所得は27万円と6・5%に過ぎない。あとはサラリーマンとしての収入や年金などである。
小農の撤退を遅らせ、結果的に専業農家のところに農地が集積されるのを阻んでいる。加えて保護政策を続ければ、専業農家といえどもやる気を失う。交付金バブルが続く限り、それに依存する体質が染みついてしまい、やがて抜け出せなくなる。
既存のコメ業界を衰退させることに関しては、本誌6月号の特集で詳述したとおりである。

【増える財政負担】

最後に減反政策がもたらすもうひとつの問題である財政負担について解説しておく。まずは前ページ図4を見てもらいたい。これは財務省が2015年11月4日に開いた財政制度等審議会財政制度分科会で提出した資料だ。これによると、農家が飼料用米をつくった場合、販売収入はわずか9000円に過ぎない。ただし、交付金は11万7000円にもなる。
この資料で財務省は転作をした農家を助成する交付額の推移も提示している(図5)。07年、08年はともに1475億円だったが、15年には2498億円、16年は3177億円と急増している。
交付額が増えている要因として財務省が挙げたのは次の2点。ひとつはコメの需要が落ちているため転作面積が拡大していること。もうひとつは転作の助成単価の増加だ。図5の折れ線が示すように上昇基調になっている。この図にはないが、15年と16年はより上がっているだろう。なぜなら飼料用米にかかる財政負担が増しているからだ。

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