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トマトの「ソバージュ栽培(R)」

東日本大震災の復興支援として

前回は、日本国内におけるトマト生産の現状を把握し、主にミニトマトの夏秋どり栽培の課題を解決するために筆者らが2010年に考案した、露地夏秋どり栽培の新栽培法「ソバージュ栽培(R)」について解説した。今回は、東日本大震災の復興支援として、太平洋沿岸の震災地域に向けたソバージュの普及と新たな取り組みについて紹介する。

1 プロジェクト研究の
背景と取り組み

2011年3月11日に発生した東日本大震災津波では、主に東北3県(岩手、宮城および福島)の太平洋沿岸部に甚大な被害をもたらした。農業分野においても、農地の損傷、施設や農業機械など生産基盤が流失した。あれから5年が経過し、生活の再建はまだ道半ばといった感はあるものの、農地復旧により生産が再開してきている。岩手県農業研究センターでは、平成25年度から復興庁・農林水産省の委託プロジェクト「食料生産地域再生のための先端技術展開事業」において、被災地農業の復興を加速化する目的で、岩手県の大槌町に現地実証圃場を設け、ミニトマトによるソバージュの実証研究を行なっている。今回は、その研究開発と現地実証の状況について紹介する。
岩手県の太平洋沿岸部の津波被災地は、中山間地域で平地が少なく、1区画10aにも満たないような狭小農地が多い。また、「半農半漁」といわれるように農業と漁業が共存する経営体も多く、漁業を主たる収入源とし、農業を副収入としている農家が過半を占める。そのため、農業における主な働き手は女性であり、震災の復興支援には軽労化技術が求められると考えられた。
そのような背景を踏まえ、被災農地の復興につなげるには、低コストで生産可能な露地夏秋どり栽培において、集約的で収益性の高い品目の選定と生産技術の確立が必要と考えられた。そこで筆者らは、「ソバージュ栽培(R)」(以下「ソバージュ」)の省力性と収量性、消費が拡大傾向であるミニトマトの市場性を考慮して、被災地の実情に合わせたミニトマトの新栽培法であるソバージュを導入し、その改良に取り組んでいる。

2 女性も作業しやすい
直立ネット誘引の開発

ソバージュでは、連載第1回で紹介したキュウリアーチ支柱を用いたアーチネット誘引(次ページ図1)が普及定着し始めているが、女性作業者からは収穫作業が大変であるといった意見が出された。そのため当センターでは、小柄な女性作業者が作業しやすいように改良した「直立ネット誘引」(以下「改良法」)を開発した(次ページ図1、2)。

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