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【人生・農業リセット再出発】
墨国と交流発祥の地
- 作家 元国際線乗務員 黒木安馬
- 第190回 2016年12月02日
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異邦人が田尻の浜に泳ぎ着いてくる深夜の大異変に、人口300人弱の大多喜藩領・岩和田村は半鐘が鳴り響き、大騒ぎとなる。恐怖と寒さに震える遭難者に村人は袢纏を脱いで着せ、意識を失っている男に女は裸になって素肌を密着させて温めた。貧しい漁民たちは、食料を惜しみなく持ち寄って37日間にわたる看病を続け、317名が奇跡の命拾いをした。藩主・本多忠朝は彼らを大多喜城に招いて歓待し、江戸城の2代将軍・徳川秀忠と会見させる。まだ実質的に実権を握っている家康にも会わせ、スペインの江戸湾入港許可と通商が成立する。
1年近く滞在し、大坂や京都も見物して『ドン・ロドリゴ日本見聞録』を書き残した。遭難の様子を記して「岩和田の貧しい村人たちは命の恩人と皆が感謝している。一方、船長の報告では、誰かが50万ペソの積荷を没収し、将軍命令で遭難35日後になって返還されたが大部分が盗まれてしまった」。難破で積荷が海底に沈んだのかもしれないし、解釈が難しいところだ。沈没の危険が迫れば積荷は海に投げ捨てても罪に問われない“荷打ち”の掟があり、破船で放棄された積荷を拾うことは海賊行為どころか、地元民にすれば貴重な海の恵みと受け取るのが慣習だった。遭難のたびに無報酬で救助に駆り出される地元民にとって、海の恵みはその暗黙の報酬とも言えた……そんな事情も重なったのかもしれない。
1年近く滞在し、大坂や京都も見物して『ドン・ロドリゴ日本見聞録』を書き残した。遭難の様子を記して「岩和田の貧しい村人たちは命の恩人と皆が感謝している。一方、船長の報告では、誰かが50万ペソの積荷を没収し、将軍命令で遭難35日後になって返還されたが大部分が盗まれてしまった」。難破で積荷が海底に沈んだのかもしれないし、解釈が難しいところだ。沈没の危険が迫れば積荷は海に投げ捨てても罪に問われない“荷打ち”の掟があり、破船で放棄された積荷を拾うことは海賊行為どころか、地元民にすれば貴重な海の恵みと受け取るのが慣習だった。遭難のたびに無報酬で救助に駆り出される地元民にとって、海の恵みはその暗黙の報酬とも言えた……そんな事情も重なったのかもしれない。
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黒木安馬 クロキヤスマ
作家 元国際線乗務員
高校時に米国留学後、早稲田大学を経てJAL国際線客室乗務員として30年勤務。世界初の「カラオケ・フライト」や「1万メートル上空・北島三郎機上コンサート」などを実現させる。千葉の自宅は1300坪の山林を開墾してプール、テニスコート、コンサートホール等を手作りする。現在、(株)日本成功学会社長として自己啓発や社員教育で講演中。著書に『成「幸」学』(講談社)、『あなたの人格以上は売れない!』(プレジデント社)、『出過ぎる杭は打ちにくい!』(サンマーク出版)、『面白くなくちゃ人生じゃない!』(ロングセラーズ)、『リセット人生・再起動マニュアル』(ワニブックス)、『小説・球磨川』(上下巻・ワニブックス)などがある。 E-mail:yasuma@myad.jp URL:http://www.3percent-club.com
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