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新・農業経営者ルポ

久留米をけん引する“Agrizmer”

小社では2009~11年、『Agrizm』(アグリズム)という若手農家のみを取り上げた季刊誌を発行していた。その09年12月号の「Hand & Hope」なるコーナーに登場していた当時27歳の田中圭介(福岡県久留米市)の目標が気になった。 「35歳、ベンツに乗る」 今年で35歳を迎える彼はその後、どうなったのか。そして、ベンツの行方は。 文・撮影(6ページ、写真3)/永井佳史、写真提供/田中農園
3月下旬といえば児童や幼稚園児は春休み期間中に当たる。福岡空港からレンタカーで南下し、久留米の田中の農場に着くと、戸外で出迎えてくれた彼の隣で小さい子どもたちがはしゃいでいた。一人は、アグリズムで田中に抱きかかえられて一緒に写っていた当時生後間もない長男の瑛仁くんだろう。妹と連れだって仲良く動き回っている様子を見ると、田中のいいお父さんぶりが想像できる。同時に、田中の柔和な表情からは、かつて誌面で掲げていた「35歳、ベンツに乗る」などという目標を口にするような人物とは思えない節があった。

高校の寮生活で実感した

田中は小学4年で水泳を習い始める。元々ぜんそくを患っており、学校の授業や夏休みに楽しんでいたプールでそれを克服できればと考えてのことだった。
その後、中学3年で出場した福岡県大会で転機が訪れる。試合会場に後に進学することになる九州産業大学付属九州高校の水泳部の監督がいたのだ。同校は全国区として知られ、田中の後輩には12年のロンドンオリンピック水泳・競泳女子200m平泳ぎで銀メダルを獲得した鈴木聡美さんがいる。田中のスイミングクラブのコーチとその監督とが先輩・後輩の間柄だったことで強豪校への道が開かれた。
中学時代とは比べ物にならないくらいの練習に必死に食らいついていくと、インターハイへの切符を手にするレベルにまで達する。残念ながら本戦では予選落ちしたものの、同じ平泳ぎではオリンピック2大会連続2種目金メダリストの北島康介さんがエントリーしていた。
前述の転機とは競技そのものではない。高校での寮生活が関与している。
「実家も高校も福岡県内なんで離れているわけではないんですけど、とにかく地元が好きで早く帰りたかったんです。というのも、朝昼晩と学食で食べるメシがあまりおいしくなかったのが一番ショックでしてね。それと後継ぎのことですね」

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