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Opinion

21世紀の農業のあり方

この記事は筆者の長年の経験と考察をまとめ、経営や技術、国の政策、世界の動きを総合的に分析したものである。

世界農業の動きと日本農業

現在、世界の農業は大きな転換期にあると思われるが、最近、酪農先進国を自認してきたニュージーランドでも同様な動きが目につく。まずはその現状に触れたい。
ニュージーランドは1年中、草が生育する、いわば草地酪農王国である。南島南部に位置するサウスランドは、これまで肉牛と羊地帯であったが、酪農に転換している。同島東部のカンタベリー平野についても、穀物の生産から灌漑による大規模酪農に移行した。
このような背景のなか、酪農家は乳生産拡大のために頭数を増やし、規模拡大に追われている。ストッキングレート(SR=面積当たり頭数)も最大限に追求され、草地は乾物生産性の高いライグラスが主流になった。草の生産量を上げるため、ha当たり200kgという尿素窒素の多用も一般化している。これは30年以前の酪農にはまれにしか見られなかった現象である。その結果、白クローバーが草地から消えていった。草地の粗蛋白(CP)は上昇し、ミネラル分のバランスの低下が生じるため、ミルクは出ても牛の健康や繁殖には適切とは言い難い酪農になってしまった。
NP肥料に過度に依存した農業は当然の帰結として環境汚染問題を引き起こす。その対策に大きな努力が払われているのが現状である。筆者は、ニュージーランドでミネラルのバランスを取ってマメ科草のある草地にすることと、N肥料を100kg/ha以下に減らすことを主張している。顧客のある酪農家はすでにその方向で動いているが、経営は安定している。
椰子油粕(PKE=パームカーネル エキストラクト)はこの10数年、輸入量が急速に増えてきた。SRを極度に高めることは、草地酪農では気象の変化、とくに干ばつ、低温による影響をまともに受ける経営となることを意味する。秋から冬、乳生産のピークを迎える春にも栄養の補給が必要となっていることがPKEの輸入増大の原因であるといえよう。しかし、PKEの多用の害が最近認められつつある。ミールなどを使用する傾向は酪農経営のなかで変動経費が増大する主因であり、施設費の増加とその返済、獣医費の増加などを含めて経営を苦しめる元となっている。

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