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新・農業経営者ルポ

0勝0敗より10勝10敗、世襲禁止も追い風の挑戦し続ける観光農園

三次(みよし)といえば中国地方の中心部に位置し、古来より山陰・山陽を結ぶ交通の要衝として機能してきた。しかし、広島駅や広島空港からは遠く、三次駅までは在来線や路線バスで約80分を要する。今回取り上げる(有)平田観光農園については駅から車でさらに20数分の中山間地にあり、集客に恵まれた場所とはいえない。にもかかわらず、観光農園の常識を覆し、そこには通年で来園者が訪れ、おなかいっぱいとは違う心を満たすサービスの数々で外国人観光客を含め年間15万~16万人もの人々を呼び込んでいた。 文/永井佳史、写真/蔦村和雄、(有)平田観光農園

果物から収穫体験に価値を
シフトした「ちょうど狩り」

それは取材を終え、平田観光農園の代表取締役社長であるオーバーオール姿の平田真一(51)に写真撮影へ臨んでもらうときのことだった。
「どんな写真ですか。(誌面のサンプルを見て)それなら若いのも集めたほうがよさそうですね。3人くらい声をかけましょう」
さっそく平田がスマートフォンで電話すると、方々から20代と思しき男性従業員3人がやってきた。デザインは個々に異なるが、皆オーバーオールを身にまとっている。我々取材陣と対面するや元気よく挨拶してくれた。
撮影ポイントは一風変わった趣のあるところだった。テラスの前方から黄緑色のビニールホースとそれにつながった赤いヘルメットが垂れ下がっている。これを被れば、そうチェリーボーイの完成だ。仮装した面々は時折付近を通りかかる来園者ににこやかに手を振ったりし、平田にいたってはポーズの取り方をカメラマンに確認する余裕ものぞかせていた。
そんな平田が経営する観光農園は、15 haの敷地で14樹種150品種に及ぶ果樹を栽培し、果物狩りを楽しんでもらうことを主力事業にしている。品目の多さもさることながら、この観光農園と他との決定的な相違点は、チケット制の果物狩り「ちょうど狩り」を夏から秋にかけて実施していることだ。
「たとえば、8月下旬であればプラムやプルーン、イチジク、リンゴ、ブルーベリー、ブドウ、モモ、和梨が収穫できます。当園では、このようにたくさんの果物が同時に旬を迎える期間が3カ月あるわけです。単一や数種類の食べ放題からなかなか抜け出せないなか、付加価値を高める方法を考えていたときに若い社員から発案されたのがそのちょうど狩りでした」

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