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実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

中小企業の社長のよもやま話

動物に学ぶリーダー論

日頃から繁殖雌牛(子牛のお母さん)の群れを見ていて気づいたことがある。我が農場には繁殖雌牛が約50頭いるのだが、偉そうにしているベテランの牛に対して、新入りは端っこにいて、常に偉そうにしているなかにどうやらリーダー格の牛がいるようだ。さらに観察してみると、放牧のときに先頭を走るもの、給餌の際にベストポジションを確保するものなど、個性では説明できない順番のような役割が見えてくる。
このような群れのなかの序列は、順位制とも呼ばれる。迫力で決まるときと、頭突きの応酬で決まる場合があって、長時間の戦闘はしていない。出産から次の出産までの間、ステージ別に数頭が同居し、何群か小さい群れとなるときも、いつも順位は瞬時に決まる。まず、ベテランの牛は体つきや顔からにじむ迫力差で若い牛を寄せ付けない。次に同列(年齢や体格差同等)の牛同士は、頭突きの小バトルを開催する。闘牛ほど迫力はないが、おもしろいので私は終始眺めてしまう。たいてい3分程度で決着し、その後は、秩序が保たれている。
牛に限らず、動物の群れのなかで生存競争を繰り広げる場面は数多く報告されている。お馴染みのニホンザルのボスザルの地位を巡る戦いは動物バラエティー番組の恰好のネタで、誰もが一度は見たことがあるはずである。餌をめぐる戦いの場合は、真剣そのものだ。しかし、生存を優先する彼らにとって、取り合いの闘争を繰り返して、怪我をしたり消耗したりすると本末転倒なので、長い争いはしない。優劣が判明し、序列が決まれば、闘争を避け、必要以上の衝突はしない。
興味深いのは、序列の強弱が時間経過で変化することである。ベテランを過ぎ、年老いて熟し過ぎた牛は群れのなかでも弱く見えるし、昨年勝敗を決した牛同士が再び戦う場面も目撃する。敗者が自らの地位を勝者に譲ることは、集団秩序の維持に必要な行動なのであろう。そして新たな勝者が群れ全体の動きに対して決定的な役割を持つリーダーとなる。リーダーが変われば、群れの行動が変わると言われ、動物は環境に応じてリーダーを選び直すことを繰り返している。
動物の話を人間に照らすのは気が引けるが、我われ人間も同じく組織のトップの言動によって、その組織の動向は左右される。ときには、組織の活動目的が変化してしまうこともあり得る。はじめは上手に生存するために知恵を絞り、仲間同士の切磋琢磨の場であったはずの組織でも、リーダーの選出が儀礼的になれば、形骸化が進み、当初の存在意義が薄れることとなる。
そうならないためにもリーダーの選出には慎重に大胆でありたい。私が考えるリーダーの資質の第一義は、強さである。経営者なら、その強さを右腕、左腕の力を借りつつ発揮することで、経営成果を上げることを目標にするべきである。その力は、貫禄やオーラに代表される非科学的なものから、現場で仕事をこなす技量、周りの人々を惹きつける情熱までさまざまだが、誰かの受け売りでなく私なりのリーダーシップを身につけたいものだと、牛の世話をしながら思っている。
さて、人材と雇用の話の次は、社長のリーダーシップの話題を取り上げようと思う。

設備も経営者も高齢化、
農業だけの問題ではない

中小企業基本法では、表1のように業種別に中小企業あるいは小規模事業者を定義づけている。なかでも製造業の場合、資本金3億円以下、従業員数300人以下を中小企業と呼ぶ。農業はもれなく製造業に含まれるが、ほとんどが従業員20名以下の経営なので小規模事業者に分類されることになる。俗に零細企業と呼ばれるカテゴリーである。

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