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とはいえ、まだ家族経営の自営業者であった松浦にとって、それは大仕事だった。当時は本格的な精米機械も持っていなかったので、家庭用の精米機を8台並べて精米を行った。昼は田植え、夜は精米、そのあとトラックで配達という超多忙な日々が続いた。2t車で2日で大阪を3往復するのも当たり前だった。「しんどかったけれど、30代前半だったからそのくらいの体力はあったし、最大限頑張ればそのくらいできるんだというのは自信になりましたね。そのくらいしないと、世間の人は認めないし、田んぼも貸してもらえません」
91年には松浦は22haほどの田んぼを借り、売り上げも1億を目標に据えていた。ところが、そんなとき松浦は交通事故に遭った。やっと田植えが終わった時期の早朝、赤点滅していた交差点に入っていって、ほかのクルマと衝突したのである。頭を打ち、あばらを2本折り、40日にわたる入院生活を余儀なくされた。
この事故を契機に、松浦は自分一人でできることには限界があると悟った。退院すると早速、本格的な精米プラントを導入し、93年、「地球の仕事」という意味のギリシア語に由来する名前の会社「アースワーク」を立ち上げた。
会社を立ち上げた時点で、松浦の方向性ははっきりしていた。冒頭でふれたように、生産メーカーの存在しない農産物の世界で、生産メーカーを目指すことだった。
「私は、お米の生産者こそ生産メーカーになるべきだと思うんです。ところが、現状では、お米の生い立ちも知らない加工メーカーが生産メーカーとなって商品名をつけている。本当の意味でのメーカー(生産者)であるはずの農家は、加工メーカーへの原料供給業者としか見なされていません。いわば日本酒の桶売りと同じです。でも、小さな蔵元が自社銘柄の吟醸酒や純米酒を造って独立しているように、私も小さくても一メーカーとして仕事をしたいと思ったんです。コシヒカリとか、あきたこまちといったブランドの感覚がなくなるというのは無理だとしても、福井に行ったら、アースワークのコメがあると言われるようにはなりたいですね」 アースワークのコメ作りは、発芽の段階から通常の稲作とは違う無農薬栽培の手法が特徴である。生産するコメのランクに応じて、酵素散布を行ったり、苗と苗との間隔を通常の2倍以上とるといった独自の方法が細かく取り決められている。そして、このようなコメ作りを積極的に評価してくれたのが量販店であった。
91年には松浦は22haほどの田んぼを借り、売り上げも1億を目標に据えていた。ところが、そんなとき松浦は交通事故に遭った。やっと田植えが終わった時期の早朝、赤点滅していた交差点に入っていって、ほかのクルマと衝突したのである。頭を打ち、あばらを2本折り、40日にわたる入院生活を余儀なくされた。
この事故を契機に、松浦は自分一人でできることには限界があると悟った。退院すると早速、本格的な精米プラントを導入し、93年、「地球の仕事」という意味のギリシア語に由来する名前の会社「アースワーク」を立ち上げた。
生産者が生産メーカーになる
会社を立ち上げた時点で、松浦の方向性ははっきりしていた。冒頭でふれたように、生産メーカーの存在しない農産物の世界で、生産メーカーを目指すことだった。
「私は、お米の生産者こそ生産メーカーになるべきだと思うんです。ところが、現状では、お米の生い立ちも知らない加工メーカーが生産メーカーとなって商品名をつけている。本当の意味でのメーカー(生産者)であるはずの農家は、加工メーカーへの原料供給業者としか見なされていません。いわば日本酒の桶売りと同じです。でも、小さな蔵元が自社銘柄の吟醸酒や純米酒を造って独立しているように、私も小さくても一メーカーとして仕事をしたいと思ったんです。コシヒカリとか、あきたこまちといったブランドの感覚がなくなるというのは無理だとしても、福井に行ったら、アースワークのコメがあると言われるようにはなりたいですね」 アースワークのコメ作りは、発芽の段階から通常の稲作とは違う無農薬栽培の手法が特徴である。生産するコメのランクに応じて、酵素散布を行ったり、苗と苗との間隔を通常の2倍以上とるといった独自の方法が細かく取り決められている。そして、このようなコメ作りを積極的に評価してくれたのが量販店であった。
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松浦助一
株式会社アースワーク
代表
福井県大野市。1961年、福井県大野市生まれ。高校卒業後、岩手の牧場で1年間働き、家業の農家を継いで肉牛飼育を手がけるが、牛肉の自由化問題や相場変動の不安から畜産を断念。87年より無農薬有機米栽培を始め、93年に「アースワーク」を設立。アースワークブランドのコメ、真空パック入りの里芋などを家庭へ直接販売するほか、量販店、生協などに納入している。
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