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経営に女性あり

夢をふくらませる果物直売と加工品への取り組み

一度会ってみたいと思っていた。農村でイキイキと自信をもって農業をしている女性をルポしてほしいという依頼があった時、まず頭に浮かんだのがこの人。
同じ夢に向かう母と娘


 一度会ってみたいと思っていた。農村でイキイキと自信をもって農業をしている女性をルポしてほしいという依頼があった時、まず頭に浮かんだのがこの人。

 井上節子さん(50歳)だ。井上さんは、神奈川県の藤沢市で果樹を専門に営む農家の主婦。井上さんを知ったのは、小さな雑誌の記事だった。

 沿道に建てた果物の直売所を背景に、ニッコリと微笑む母と娘。シャッターには、娘さんが描いたという「ふるうつらんど井上」の可愛いモモやブドウ、ナシたちのイラスト。その記事には、直売でフルーツとその加工品を販売し、将来は、フルーツを使ったお菓子なども楽しめる喫茶店を開くのが夢――とあった。

 後継者が娘さんというのも、何かうれしかったが、母と娘が元気よくワイワイと自分たちの夢を実現している様子が新鮮だった。これからの農村に生きる女性たちの方向性を示してくれているような気がした。井上さんは、元気な農村女性の集まり「女のネットワーク」の会員でもあり、そのツテで、ご自宅をお訪ねすることができた。

 小田急線の長後駅に、自ら車を運転して迎えに来てくれた。濃いピンクのポロシャツがよく似合う。やはり、この母娘の明るさが目立つのか、数日前には、地元のTV局が、女性後継者の娘さんを取材に来たばかりだという。交通量の多い車道を一本それて、直売所、加工所の前を通り、高台にある自宅へ。眼下に広がる果樹の棚、約二ha余りが、「ふるうつらんど井上」の果樹園である。

 「結婚したころはね、あの辺に牧場があったのよ」と、青々としたブドウ棚を節子さんが指さした。


白い和紙の名刺


 「一応外向けの肩書きで……」と節子さんが白い和紙でできた名刺を差し出した。そこには「ふるうつらんど井上 加工品開発担当 井上節子」とあった。

 井上さんのところでは二ha余りの果樹園にあらゆる果物を栽培しているが、一部のウメを除き、ほとんど市場出荷せず直売で売り切っている。生ものは、直売所での販売と宅急便、加工品も同じだ。これを節子さんと夫の欣之助さん(53歳)、二女で後継者の裕紀子さん(26歳)の三人で切り盛りしている。

 欣之助さんが、ふるうつらんど井上の会長職、加工品が節子さん、宣伝が裕紀子さんという分担である。現在に至るまでの経緯から、たどってみた。

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