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農業経営者ルポ

形だけお米であれば良いのか?

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第3回 1993年10月01日

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例年ならすでに収穫作業の真っ最中だという九月二五日、青森県津軽の穀倉地帯木造町では、あたかも天を突くかのように稲は青立ちしていた。イモチ病の病斑というより、すでに一面が薄茶けた枯れ野のようになった水田が広がっていた。わずかに穂を垂らす稲も手で触るとなんの抵抗もなく潰れてしまうモミが多い。実らぬ作物が広がる景色は、見る者の心を暗くさせる。しかし、作況指数三〇程度(九月一五日現在)といわれるこの地域にあって、被害は受けていても見るからに穂の重さが違う田がある。小田川さん(60歳)の田である。
 例年ならすでに収穫作業の真っ最中だという九月二五日、青森県津軽の穀倉地帯木造町では、あたかも天を突くかのように稲は青立ちしていた。イモチ病の病斑というより、すでに一面が薄茶けた枯れ野のようになった水田が広がっていた。わずかに穂を垂らす稲も手で触るとなんの抵抗もなく潰れてしまうモミが多い。実らぬ作物が広がる景色は、見る者の心を暗くさせる。

 しかし、作況指数三〇程度(九月一五日現在)といわれるこの地域にあって、被害は受けていても見るからに穂の重さが違う田がある。小田川さん(60歳)の田である。

小田川さんは、すでに三〇年近くも無農薬の稲作りを続け、そして、栽培する一七haの稲すべては「小田川さんのお米」を求める消費者に直接販売している。

 「お客様の八割以上の方は何らかの病気を持っており、医者からも見離された難病、奇病の人たちも多い」

 という。

 同地区は多収の地域である。しかし小田川さんの場合、平年作で実に一四俵。目標は一tどりだと言うのだ。八月に入ってお盆過ぎまで一〇~一二度Cという日が続いた今年の夏は、小田川さんにも初めての経験である。生育が二週間以上は遅れている。その後の天気次第だが、よくても平年の六、七分の作だろうというのが小田川さんの予想。それでも同地区としてぱ平年作で一〇俵程度だから、三分の作だといえば今年は取れても二、三俵。青立ちしていたりイモチでほぼ全滅だと一目で分かる田があるのを見ると、小田川さんの“作”の違いが分かる。

 しかも「無農薬で」である。

 いや、小田川氏の場合、むしろ自然の持つ可能性を損わない「無農薬だから」なのであり、そして田から取り出したものを田に戻し続ける「循環農法」だから、と言うべきなのだろう。

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