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【江刺の稲】
問うべきは我より他になし
- 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
- 第4回 1994年01月01日
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第三号の経営者ルポでご紹介した小田川太氏のルポに対して、共感を述べられる電話やお問い合わせをいただいた。そうした電話のなかで、一本だけ全く別種の電話があった。
電話の主は、小田川氏の田をご覧になっている旨、話されていることを考えれば、その近くに住んでいる人なのかもしれない。その声や話し振りを聞くに、冷やかしでいうのでなく文字通り「真面目」な人だと感じた。
彼は怒っていた。彼は、小田川氏を経営者のルポに取り上げたこと自体を批判し、またそのことに苛立っている様子だった。
その人、曰く
「本当に一七haを家族五人で田押し車を使って除草できると思いますか? それにしては田に草が少なすぎる!」
「農薬を使わずに本当に一四俵も取れると思いますか?」そして、無農薬を語るインチキ農産物が多いことを「農水省の報告でも言われている」と解説して下さった。さらに、
「いい加減な人を紹介すると掲載されているその他の記事の信憑性も疑われますよ」と、ご忠告までいただいた。
しかし、彼は自らの名前を名乗らなかった。今の時代状況の中でのその方の気持ちも分からないでもなく、僕なりに丁寧な対応をして電話を切ったつもりだ。でもその後で、下品だが、「いつまで、そんなこと言ってんだよ」と叫んでしまった。
読者であるだろう電話をいただいた貴殿に申し上げる。もう一度小田川氏のルポを読んで下さい。そして、もしそのルポの主人公が、貴殿が多分不愉快に思っているだろう小田川氏ではなかったとしたら、記事をどう読んだかも考えてみていただきたい。
電話の主は、小田川氏の田をご覧になっている旨、話されていることを考えれば、その近くに住んでいる人なのかもしれない。その声や話し振りを聞くに、冷やかしでいうのでなく文字通り「真面目」な人だと感じた。
彼は怒っていた。彼は、小田川氏を経営者のルポに取り上げたこと自体を批判し、またそのことに苛立っている様子だった。
その人、曰く
「本当に一七haを家族五人で田押し車を使って除草できると思いますか? それにしては田に草が少なすぎる!」
「農薬を使わずに本当に一四俵も取れると思いますか?」そして、無農薬を語るインチキ農産物が多いことを「農水省の報告でも言われている」と解説して下さった。さらに、
「いい加減な人を紹介すると掲載されているその他の記事の信憑性も疑われますよ」と、ご忠告までいただいた。
しかし、彼は自らの名前を名乗らなかった。今の時代状況の中でのその方の気持ちも分からないでもなく、僕なりに丁寧な対応をして電話を切ったつもりだ。でもその後で、下品だが、「いつまで、そんなこと言ってんだよ」と叫んでしまった。
読者であるだろう電話をいただいた貴殿に申し上げる。もう一度小田川氏のルポを読んで下さい。そして、もしそのルポの主人公が、貴殿が多分不愉快に思っているだろう小田川氏ではなかったとしたら、記事をどう読んだかも考えてみていただきたい。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
江刺の稲
「江刺の稲」とは、用排水路に手刺しされ、そのまま育った稲。全く管理されていないこの稲が、手をかけて育てた畦の内側の稲より立派な成長を見せている。「江刺の稲」の存在は、我々に何を教えるのか。土と自然の不思議から農業と経営の可能性を考えたい。
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