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視点

おやじを超えて、距離を超えて

  • 株式会社K's FARM 代表取締役社長 十勝おやじの背中を超える会 会長 梶宗徳
  • 第68回 2010年01月01日

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 頻発する食品問題は極端な金儲け志向、そして生産者と消費者の乖離に一因があると思う。消費者の顔が見えないから生産者は質よりも収量に重点を置いてしまうし、生産者の顔が見えないから消費者は食品の価値を価格ベースでしか判断できない。食を通した心の繋がりは存在しないのだ……。

 自身に照らし合わせてみても、十勝農業の基幹4品目も、原料作物ゆえに、消費者と生産者の間にある距離は遠い。解決する手段は、作り手と食べ手が交流して信頼関係を築くことと考えて、2009年1月、「十勝おやじの背中を超える会(おやせな)」を発足した。メンバーは4品目を手がける農業青年30名弱で、20代半ばが中心だ。

 名前には食糧自給率1100%の大地を育てた父親世代あるいはその先人たちに敬意を表し、それを受け継いだ者として、日本の食料を守り続けようという思い、さらに作り手と食べ手の間、あるいは農山漁村と都市間に信頼関係を築こうという気持ちを込めている。


消費者から「気づき」を得る

 消費者との接点を作るため、これまで「おやせな」は東京・霞が関での消費者交流会を開催したり、帯広市中心部にて消費者や近隣の飲食業との交流の場「A shop」を運営したり、さまざまな活動に挑戦してきた。中でも印象的だった出来事は、原麦をテーマとしたメッセージ発信をしようと訪ねたイタリアンレストランで、スペルト小麦という高価な輸入品を使用していたことだ。原麦を求めている料理人がいるとは想像だにしなかった。料理人も、十勝産小麦の原麦を欲していたのだが、その流通経路を知らなかった。同じ地域で需要と供給が交じり合っているにもかかわらず、繋がっていない現状をあらためて知った。

 こうした経験を通して、売ることでの繋がりではく、消費者と触れあうことで「気づき」を得る大切さをメンバーは実感していったように思う。


団結しやすい組織

 私は農協青年部の役員を経験したが、組織は大きくなるほど、多くの考え方があり、そのどれもを大切にしなければいけないため、結果として身動きが取りづらくなる。その点、私たちは作り手と食べ手が繋がるという目的が明確なため、想いを共有できている。

 今年は、ビーンズサミット、東京での消費者交流会、食育活動などを予定している。描いている目標は「生産者全員が食べ手の顔を思い浮かべて畑で仕事をすること」と「消費者全員が作り手の顔を思い浮かべて食事すること」。この二つを合言葉に、互いの距離を少しでも近づけ、おやじたちから受け継いだ十勝農業をさらに発展させていきたい。

(まとめ・鈴木工)

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