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この号が届くのは正月か。また新しい一年が始まるな。まあ俺ら百姓はいつだって時代の気分を感じながらうまい作物を提供していくまでよ。よく「時代とともに変化する消費者ニーズをつかむのが重要」とかいうけどよ、相手が何を考えているのかわかる奴なんていないんだよ。最近はユニクロが伸びてるけど、あれだって別に消費者のニーズをいちいち聞いてうまくいったわけじゃねえ。時代の空気を読んで、自分たちでニーズを作り出すしかないってことよ。
いまの社会は何を思っているかっつったら、政治が安定してないから先行き不安でしょ。仕事もいつリストラされるかわかんないし、家庭も子育ても不安でしょ。そんで子どもを育てたら今度は就職難でしょ。もう不安だらけじゃん。笑えるもんなんて何もねえじゃん。だからテレビつけりゃあ、大した脳もねえ芸人が出てたってバカなこと言ってりゃ、まあ笑って済ませるかってことになんのよ。鳩山の話なんか聞いててもしょうがねえんだからよ。
社会の空気をつかむってのは、別に難しいことじゃねえよ。視野を広げていろんなものに興味を持つことができれば、人間は変わっていくもんだよ。自分とは違うものを知って、それが自分より優れたものであっても、世の中にそういうもんがあるってわかっただけでもプラスになる。それに気付かない限りは何も進歩しないね。作物にしても自分のものが一番いいとかじゃなくてさ、たとえばコメ農家だったら人のコメを買ってでも食ったほうがいいんだよ。
そういやこんな話があるよ。知り合いのスーパーの社長さんから電話があって、深刻な声でこう言うわけ。
「いや浅野さん、うちの店で扱っているコメは生産者を選んだり、自分なりにうまいと思うものを仕入れていて、おかげさまでちゃんとした売上もあるんです。だけど先日、地元の小学校の実験田で子どもたちが作ったコメを、女房がバザーで買ってきたんですが、それを食べてがっかりしちゃって。だって子どもたちが作ったコメのほうが、こだわりの生産者のコメよりうまいんです。原因は一体何でしょうか?」って。
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浅野悦男 アサノエツオ
エコファーム・アサノ
オーナー
1944年生まれ。千葉県八街市の「エコファーム・アサノ」オーナー。2.5haの圃場で100品目を超える西洋野菜を栽培し、全国のレストランに販売する。ユニークな発想から生み出されるメニュー提案が、イタリアンやフレンチなどレストラン関係者の注目を集め、取引先のシェフたちが「農場参り」を行なっている。
エコファーム・アサノ 脳業発想力
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