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【農水捏造 食料自給率向上の罠】
GDP推移から明らかになる、「日本農業の衰退」という幻想
- 農業ジャーナリスト 浅川芳裕
- 第16回 2010年01月01日
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「いつもあっと驚く新事実の紹介楽しみにしています。ところで、毎回どうやってネタを探しているのですか」(読者からの投稿)
米国中央情報局CIA発行の『CIAの世界ファクトブック』(The CIA World Factbook)を元にしている。高校時代からの愛読データ本の一つで、世界のすべての国々の国力を軍事力、経済力、農業力などあらゆる切り口から事実分析してくれる。当時は大阪の大手書店から取り寄せで購入していたが、今ではCIAの公式ホームページ(https://www.cia.gov)をみれば更新情報が簡単に入手できる。
CIAが農業力を示す筆頭にあげる物差しが農業GDP(国内総生産)だ。GDPは一定期間に国内で産み出された付加価値の総額で、国の経済の規模・成長を測る物差しとしてご承知のとおりである。日本のメディア、統計情報ではほとんど見かけないが、国の経済構造をみるのに農業(林業・水産業含む)、工業、サービス業の3つの産業別GDPに分けて示されることが多い。CIAが示す農業GDPとは、この農業の産業GDPである。
まずは、日本の農業GDPの世界順位を取り上げる。図1をご覧いただきたい。30年以上に渡って、5位以内をキープしており、1991年から95年の5年間は世界4位であった。中国にその座を引き渡すのは時間の問題とはいえ、「日本は世界第2位の経済大国」と政府やメディアが長年、叫び続けてきた根拠は、この農業GDPに工業GDP、サービス業GDPを足した日本全体のGDPである。同じ基準でいえば、「日本は世界5位の農業大国」といってまったく語弊はない。
経済指標としてGDPを見聞きしない日はないほど浸透しているのに、その3大構成要素の一つであり、農業の経済力をもっともよく示す農業GDPはまったく知られていない。CIAのように世界比較まではしなくとも、各国は自国の農業GDPを大きく公表している。日本の農水省も当然、発表しているが、その扱いは「食料自給率」に比べて不自然なほど小さい。
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浅川芳裕 アサカワヨシヒロ
農業ジャーナリスト
1974年山口県生まれ。1995年、エジプト・カイロ大学文学部東洋言語学科セム語専科中退。アラビア語通訳、Sony Gulf(ドバイ)、Sony Maroc(カサブランカ)勤務を経て、2000年、農業技術通信社に入社。元・SOGULマーケット専門官。元月刊『農業経営者』副編集長。現在ジャガイモ専門誌『ポテカル』編集長。2010年2月に講談社より発行された著書『日本は世界5位の農業大国-大嘘だらけの食料自給率-』がベストセラーになる。最新刊に『TPPで日本は世界1位の農業大国になる ついに始まる大躍進の時代』(KKベストセラーズ)がある。
農水捏造 食料自給率向上の罠
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