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編集長インタビュー

米国農業の歴史から分かった、“人材教育”こそ強さの秘密



昆 米国だけでなくオーストラリア、ニュージーランドのように移民国家の農家は農場を売ったときが“あがり”という意識を持ってますよね。

斎藤 日本でも米国流でやろうとした畜産農家の親子がいたのですが、息子の方にはまとまったお金がないので月々ローンで父親に代金を払う選択したんです。ところが、税務署は親子間の取引は認めないとなりました。農家から税金が取ることができないからの判断ですよね。

昆 農業においては、相続税と贈与税の納税猶予が認められているように、余計な税金を払わなくてもいいというようなお目こぼしがありますから。だから、本来農家と呼ぶべき人でない人が農地を持って納税猶予し、農地の流動化を妨げているという悪弊の温床になっています。

斎藤 農業所得がある人が毎年どれくらい税金を払っているかという国税統計を見ますと、農業者で所得税を払っているのは3分の1程度です。じゃあ米国で所得税を払っている農家はどのぐらいいるか、というと、ほとんどいないでしょう。コンサルタントや弁護士らによって節税対策がきっちりしていますから。

米国農業と日本農業、どっちがグッドか?

昆 それは米国農家が豊かな人たちばかりでもないということの裏付けにもなるのではないでしょうか。実際、米国農家の規模は大きく、稼いでいると日本人は思い込んでいますけれど、販売金額が5万ドル以上10万ドル以下の農家は少なくない。日本の農家よりも米国の農家の方が貧しいといえなくもないんですよね。

斎藤 農業ビジネスの成功者への生産・資産その他を含め集中度が非常に高いから、そのイメージを持ってしまうからなのでしょうね。米国にはビジネスチャンスを見つけて、急激に大きくなる、強くなる農業経営者がいます。自由競争の中におけるビジネス育成はそういうものだという認識が社会のコンセンサスになっていますので。
 ただ、そうしてビジネスとして大きくなった、強くなった米国農業が消費者にとって良い農業なのか、という点については、どうでしょうか。米国農業の強さを象徴しているのはトウモロコシですね。飼料を作って安い肉を作り、スナック菓子を作り、コーンシロップは清涼飲料水になる。いうなればファストフードの原料です。しかも米国社会の中では朝から晩まで常に飲食されているようになっている。米国では明らかに肥満の人は人口比の30%超、やや肥満の人も同じぐらいです。つまり体格面で健全な人は米国に3人に1人しかいないという計算です。当然ながら医療費は高くなっているし、世界で一番強くて効率的な農業が、世界で一番不健康な人を作っている。米国農業はストロングではあるけど、消費者にとってはグッドでフレンドリーな農業ではないと思っています。

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