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今、典男が考えているのは、いかに雇用を創出するかという課題だ。家族経営の範囲では満足のできる農場を作ってきた、果物を果物として販売することも随分やってきた。家族経営の専業農家としては申し分ないが、地域の活性化を考えるなら、新しい雇用を創る必要がある。
昨年6月、管理栄養士の資格を持っている太田佳美が入社した。カフェの経営経験もあり、スイーツの研究家でもある。彼女は果物を使った加工食品の商品開発を担当することになった。さっそく紅茶専門店から紅茶に合うレモンシロップの開発を依頼され、1カ月がかりの研究の末に見事に完成させた。来年には加工食品部門に更にもう1名新しい人材を採用するため、既に選考が始まっている。
企業としての事業形態に転換を図ろうとする中、先代が経験してきた海外市場への進出はどのように考えているのだろう。ネット通販の世界では、楽天が中国へ進出するなど国境を越えた販路拡大のチャンスとなっている。しかし、典男からは意外な答えが返ってきた。
「輸出や海外取引は考えていません。国内にはまだ観音山をご存じないお客様がたくさんいます。農産物には開拓すべきマーケットが、まだまだあると考えています」
独自の販路開拓とブランド作りで成長する観音山フルーツガーデンには、国内にまだ未知の市場が秘められているのだろう。(本文中敬称略)
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児玉典男 コダマフミオ
(有)柑香園(観音山フルーツガーデン)
代表取締役
1949年、和歌山県紀の川市(旧那賀郡粉河町)生まれ。1972年、三重大学農学部卒業後、2柑香園に入社。明治時代から100年近く続くみかん園の5代目の園主となる。会社名とは別に商標登録した「観音山フルーツガーデン」により農場のブランド化に成功。100%直接販売で売上は約7,000万円。和歌山通訳ボランティアクラブ発起人、農業情報ネットワーク全国大会事務局長などを歴任、地域貢献活動にも積極的に関わっている。
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