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【農水捏造 食料自給率向上の罠】
「10年後のコメ消費量は、国民一人当たり6.3kg上昇する」(新食料・農業・農村基本計画)
- 農業ジャーナリスト 浅川芳裕
- 第20回 2010年04月28日
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3月29日、食料自給率の2020年度目標を50%と定める食料・農業・農村基本計画が閣議決定された。
自給率向上政策の廃止を目的と掲げた以上、この連載は少なくとも先5年、継続することも決定した。読者諸兄、政策が廃止するまでなにとぞお付き合いいただきたい。
さっそく、食料・農業・農村基本計画を読んでみた。初っ端から計画当局(農水官僚)の思想が吐露してある。一部を紹介しよう。
「基本計画に基づいた様々な取組みによって、新鮮な農産物や多彩で高品質な食品が手頃な価格で食卓に並ぶようになった」
「また、基本計画に基づいた様々な取組によって、(中略)農業者、食品産業事業者の努力も徐々に広がりをみせる」
「基本計画に基づいた様々な取組によって、先進的な経営を行ない、他産業を上回る所得を得る農業者も現れている」
計画当局は全知全能なのか!?
これは、全国各地に無数にいる民間の農産物生産者や流通業者が、5年に一度改定する基本計画にそって事業を行なっているという計画当局の声明文である。そして、当局の計画に従って、事業者は努力する、食生活は豊かになった、農家の所得も上がった、と当局がその成果を国民に宣言しているのだ。
計画当局(農水官僚)の妄想ここに極まれりである。
あたかも計画当局が全知全能がごとく、過去5年にわたって、計画どおり、正しく国民、農民を導けたといっているのである。
どこの誰が当局の5カ年計画を読み、その指導に沿って経営努力しているというのか。日々、顧客のための生産や販売に忙しい事業者は、こんな無意味な計画を読む暇などない。読む価値を見出さないどころか、計画の存在さえ知らないのではないだろうか。
その証拠に、どれだけの人がこの計画を読んでいるのか調べてみた。わずか1万1458件である(計画文書PDFの農水省ホームページからのダウンロード数。4月22日現在。農水省情報政策課から聞き取り)。農水省の職員数2万6000人の半分以下である。計画した張本人の当局さえ読んでいないようでは、農業者、流通業者はほとんど誰もみていないに等しいといっていいだろう。
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浅川芳裕 アサカワヨシヒロ
農業ジャーナリスト
1974年山口県生まれ。1995年、エジプト・カイロ大学文学部東洋言語学科セム語専科中退。アラビア語通訳、Sony Gulf(ドバイ)、Sony Maroc(カサブランカ)勤務を経て、2000年、農業技術通信社に入社。元・SOGULマーケット専門官。元月刊『農業経営者』副編集長。現在ジャガイモ専門誌『ポテカル』編集長。2010年2月に講談社より発行された著書『日本は世界5位の農業大国-大嘘だらけの食料自給率-』がベストセラーになる。最新刊に『TPPで日本は世界1位の農業大国になる ついに始まる大躍進の時代』(KKベストセラーズ)がある。
農水捏造 食料自給率向上の罠
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