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「スシポリス」は今いずこ
5月の連休が終わってすぐにヨーロッパをめぐってきました。自然再生エネルギーに取り組む養豚農家を訪ねることがテーマでしたが、その詳細は、いつかこの欄で紹介するとして、今月は海外日本食事情について取り上げてみたいと思います。
ヨーロッパは予想外の寿司ブームでした。ロンドンやフランクフルトのように在留邦人の多い大都会は、どこの街角にも寿司屋がありました。高級デパートの食品売り場には寿司コーナーがあり、地元の人にも大人気。と言うよりは、寿司というものが単なる食品というのではなく、何かスピリチュアル(精神的)なアイテムになっているような印象さえ受けました。
気がかりは、寿司の形こそしているが、ホントの寿司のレベルからほど遠く、せっかくのブームもいずれ腰折れするのではないかという懸念です。
これで思い出したのが、あの「スシポリス」。3年前に、この欄でも取り上げましたので、ご記憶の向きはあると思います。当時、農水大臣だった松岡利勝さんが、米国コロラド州へ出張した際に立ち寄った日本食レストランで、寿司に並んで韓国風焼き肉がメニューにあるのに大憤慨し、海外の寿司店がきちんとした調理法で寿司を提供しているかどうかチェックするとぶち上げました。
ところが、あまりにもやり方が稚拙すぎて海外から「スシポリス」と散々な評価を受けてしまいました。それを受け、わが政府は及び腰になり、農水省が要求した予算をいったんゼロ査定にしましたが、その後、言い出しっぺの松岡大臣の顔を立てて名称を「海外日本食優良店調査・支援事業」に変え、満額の2億7600万円が認められるという経緯がありました。
そのときの農水省は、「海外日本食優良店について調査を行なうとともに、現地における優良店の基準の策定・普及、日本食料理人への講習会の開催といった支援を行ないます」と説明しておりました。日本食レストランへの信頼度を高め、農林水産物の輸出促進を図ることを目的にしておりましたが、はたしてどうなったのでしょうか。
その後、農水省の関係部局からきちんとした説明はありませんし、あれだけスシポリスを批判していた一般紙もその後フォローはなし。宮崎弁なら、「まこちやかんたぎっじゃがね~おまや」、ほんと飽きやすいよね~お前は、ということになるのでしょうか。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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