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“ガラパゴス現象”という言葉があるそうだ。
ウィキペディアによれば「ガラパゴス化(ガラパゴス現象)とは、生物の世界でいうガラパゴス諸島における現象のように、技術やサービスなどが日本市場で独自の進化を遂げて世界標準から掛け離れてしまう現象のこと。技術的には世界の最先端を行きながら、国外ではまったく普及していない日本の携帯電話の特異性を表現するために作られた新語」だそうだ。
携帯電話に限らず、現代の日本あるいは我われ日本人の姿を言い当てている。景気の浮き沈みはあっても最高のマーケットであり続けた日本。そこに安住してきたわが国のサービス業や小売業。農業界もまた典型的なガラパゴス化した業界である。
貿易上の障壁によって海外から隔離されること以上に、我われ自身の“精神の鎖国”こそが原因というべきだろう。
リスクを背負って海外マーケットにチャレンジするより、恵まれた国内マーケットで過剰な競争を続けてきた結果、日本の小売業や外食産業などのサービス業は、ほかの先進国の企業と比べて大きく立ち遅れてしまった。
世界の変化を見つめようとしない日本農業の姿などは、絶滅危惧種のひとつとして数えられているガラパゴスペンギンのようなものである。
近年、海外に行って感じるのは、そこで日本人の顔が見えてこないことだ。その一方で、中国、韓国あるいはベトナムなどアジア諸国、ロシア、東欧諸国の人々は世界各地で活躍している。世界の街を闊歩する中国人、韓国人の姿や、声高にかわす彼らの話し声が大きければこそ、影の薄い日本や日本人の現在を感じてしまうのは僕だけではないだろう。
世界中が日本食ブームだといっても、その経営者はほとんど中国人、韓国人、ベトナム人である。中華料理店だけでなく韓国料理の店が世界中の街で目立ち、韓国語の看板を出して韓国製品を多数並べた店舗があちこちにある。かつてトヨタ、ホンダ、ソニーといった日本企業の看板が目立っていた地域で、ヒュンダイ、サムスン、LGといった韓国企業の看板ばかりが目に入ってくるし、IBMのPC部門を買収したレノボ、さらに自動車メーカーのボルボもすでに中国資本である。まさに、日本のガラパゴス化が進行している。
しかし、このガラパゴス化は悪いことばかりではない。韓国や中国で大成功しているカルフールやウォルマートが、日本では撤退せざるを得なかった。そこに我われは自信を持つべきである。過剰な競争がデフレをもたらしたという批判もあるが、わが国のサービス業、小売業が実現してきた“顧客本位”の商売文化とそのノウハウは、どんなマーケットのお客さんにも嫌われるわけはない。また、農業を含めて生産者たちはそれに応えてきたのである。
先ごろ、わが社とメイド・バイ・ジャパニーズ事業を共同で進めている法律事務所MIRAIOとともに、中国山東省高密市の行政・農業関係者を各地の農場や施設に案内する教育ツアーのガイド役をした。我われとの合弁事業を求めてくる同市農業・食品関係者たちは、わが国の先端的な技術とともに、そこにある“顧客本位”に大いに共感していた。
日本人がその精神の鎖国から自由になれば、日本で作られてきた顧客本位のビジネスとそれを保証する日本農業は、世界で必要とされるのである。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
江刺の稲
「江刺の稲」とは、用排水路に手刺しされ、そのまま育った稲。全く管理されていないこの稲が、手をかけて育てた畦の内側の稲より立派な成長を見せている。「江刺の稲」の存在は、我々に何を教えるのか。土と自然の不思議から農業と経営の可能性を考えたい。
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