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本間のユリ栽培は減反圃場で行なっているため、水稲用の土壌をユリ用に最適化する土づくりにはもっとも気を使う。ユリは水はけの良い土壌を好むため、(1)プラソイラでしっかり硬盤を破壊する、(2)天地返しをする、(3)高畝にして籾殻暗渠も施す、といった対策を行なっている。
地力づくりには、(1)収穫後にソルゴーを播いてすき込み、(2)足りないときは安い牧草を買ってきてすき込み、(3)それでも間に合わないときは1500立方メートルの客土も準備している。
「客土は、水害対策のために荒川の河川敷から掻きだされたもの。それを安く手に入れておいたのです」
かつて村を濁流で飲み込んだ悲劇の川ではあるが、そんな川の神様からの贈りものなのかもしれない。
また、球根を植え付ける際のピッチは、最高品種のカサブランカの場合は3段階に分けてノウハウ化している。小型は25cm、中型は28cm、大型は32cmといった具合だ。
ユリの球根は、7割がオランダからの冷凍球である。解凍後にある一定の温度で保存してから定植することで、葉数や花数、開花時期をある程度コントロールできるが、その技術はなかなか奥が深く、現在も研究を続けている状態だ。
そして輸入球以外の3割は、小さい球根を安く買って自分で大きくする養成球を使っている。養成球は品質を向上させると同時に生産コストを下げる効果が大きく、輸入球に比べると製造原価は半分に抑えられる。ただし、気象条件によって養成に失敗するリスクもあるため、その比率をどうするかという戦略的な計画を冬場に立てている。前述した通り、緻密な計画書作成は淳子の担当である。
このほかにも本間は、減反圃場を利用し、常に新しい作物の試験栽培を続けている。山菜もそのひとつである。特にギョウジャニンニクは、7年越しの研究の末に出荷にこぎつけた労作だ。播種から株ができるまでに4年ほどの歳月がかかったが、一旦できてしまえば株は倍々で増えていく。自然栽培では水田の作業時期と重なるため、手が空いている冬場の作物として最適である。
そもそもギョウジャニンニクの栽培は、ユリの輸入球が入っているコンテナとピートモスを有効活用できないかという思いつきから始まったものだ。コメで以前から付き合いのある米穀店に出荷するなど、販路も確保している。今後も顧客と相談しながら、山菜や梅干などの漬け物、ユリ切花などを市場以外に販売していく予定である。
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本間茂雄 ホンマシゲオ
岩船地域農業生産組織連絡協議会
会長
1957年、新潟県関川村生まれ。地元高校を卒業後、茨城県水戸市の鯉淵学園(現鯉淵学園農業栄養専門学校)に進学。その後、自転車旅行をしながら有機栽培農家を訪ね歩く。帰郷後、24歳で製材所に就職すると同時に結婚。1997年、16年間務めた製材所を退職して専業農家になる。2年前より長男・健太郎(27歳)が就農。10haの圃場のうち、水田8haで特別栽培米を、残りの2haでユリ切花や山菜などを生産する。ユリの年間売上は2,800万円を超える。あらかわ切花部会長。
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