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本誌読者の場合、栽培計画については、スタッフ・機械などの繁忙期が重ならないように考慮して、作物を選び、1年間の作業の均等化を意識して計画しているだろう。財務・会計については、申告や決算の季節に、1年間で1度まとめるというケースだろうか。そうすると、その時期は、申告の手続きに追われて、次の計画にまで頭が回らないということになる。スタッフの雇用については、均等化を心がけている経営者が、自分自身の仕事については均等化できていなかったりする。やらなければいけないことに追われる循環では、事業としては不確かだ。
その悪循環を避けるためにはどうすればいいか。問題に向き合う時間を分散させて、バランスをとればいい。経営者の抱えている仕事も年間で均等化を心がけてみるのだ。そうすると、忙しい時期と、ゆとりのある時期が分かるようになる。栽培計画で経験したことを経営者自身のために応用したらいいだろう。
思考の共有で作業を委譲する
事業計画は経営者だけでなくスタッフも理解していると心強い。(有)さかうえの場合、現場スタッフは事業計画の中の栽培計画を共有するようにしている。彼らには作業の合間を見つけて作業フロー図を描かせてみる。共に作業を進めるスタッフに対して、ついつい教えようとしてしまうのだが、逆にスタッフに聞いてみるのだ。そうすると、相手がどこまで理解しているのかを確認でき、こちらが何を教えたらいいのか、何を説明しなくてもいいのかも分かる。これは、作業のイロハを伝えるだけでなく、作業工程が円滑に進むという点でもメリットがある。
当然、計画通りに進むこともあれば、事業の途中で、修正しなければならない事態も発生する。天候の影響で成長が思わしくなかったり、病気が発生したり、プログラムに不具合が生じたり、発生する問題は多様だ。計画は作成したら完成、ではなく、予実管理をして現実に沿うように随時修正していくことが大事だ。現場のスタッフが行なう作業の進捗を毎日管理するのも、畑の状況をモニタリングするのも、そのためだ。スタッフからの報告も、事業計画にかかわる重要な情報になる。
思考を共有したスタッフに、事業を実質的に進める作業工程を委譲できるようになれば、農業経営者は畑から出て、外に出かけるゆとりが生まれる。作業にとられる時間が多く、作業に追われている環境から、経営者は安心して問題を認識・把握・分析する時間を確保できるようになる。事務所で考える時間帯を決めるようにしたり、紙に書き出して整理をしたり、問題に向き合うことを習慣化してしまえば、労苦はないはずだ。また問題整理する作業には、外部の力を借りてもいいだろう。時間も労力も気にせずにつぎ込んだことは、基礎知識として身に付くはずだ。
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坂上隆 サカウエタカシ
農業生産法人 株式会社さかうえ
社長
1968年鹿児島県生まれ。24歳で就農。コンビニおでん用ダイコンの契約栽培拡大を通して、98年から生産工程・投資・予算管理の「見える化」に着手。これを進化させたIT活用による工程管理システム開発に数千万円単位で投資し続けている。現在、150haの作付面積で、青汁用ケール、ポテトチップ用ジャガイモ、焼酎用サツマイモなどを生産、提携メーカーへ全量出荷する。「契約数量・品質・納期は完全100%遵守」がポリシー。03年、500馬力のコーンハーベスタ購入に自己資金3000万円を投下し、トウモロコシ事業に参入。コーンサイレージ製造販売とデントコーン受託生産管理を組み合わせた畜産ソリューションを日本で初めて事業化。売上高2億7000万円。08年から食品加工事業に進出。剣道7段。
坂上隆の幸せを見える化する農業ビジネス
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