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【過剰の対策、欠乏の克服】
微量要素をどう判断するか
- 農業コンサルタント 関祐二
- 第80回 2011年02月01日
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日本人になじみがうすい微量要素の過剰と欠乏
作物への繊細な接し方ができるということで、中南米やオーストラリアの園芸分野では中国人、ベトナム人、日本人などの能力が評価されています。細かな作業をするうえで、欧米人にはないアジア人の感性があるのかもしれません。
こうした一般的な評価とは別に、作物に生じる異変のなかで微量要素に関わるものについては、少し話が違います。微量要素の過剰や欠乏は、作物の生育に微かな変化が生じるところから始まって、だんだん誰の目にも異常な姿となって発現していきます。これが実は日本人にとって、あまり接したことのない植物の変化なのです。
その理由を説明する前に、まず微量要素とは何でしょう。作物が吸収する栄養無機成分のうち、最も多量にあるものを多量要素と称します。作物によっても異なりますが、吸収利用する量は10aあたり成分で約5kgと考えます。つまりはチッソ、リン酸、カリという、NPK3要素です。
次に中量要素と称するものが、カルシウム、マグネシウム、イオウ、ケイ酸などです。これは10aあたり成分で2kg程度を吸収します。そして、今回のテーマである微量要素はこの吸収量が10aあたり成分で100gです。この数値は単に欠乏しやすいというだけでなく、過剰にもなりやすいということを意味しています。
ここまでは比較的わかり易い概念だと思います。ただし、微量要素は単に土の中にあるとかないとかだけではなく、土のpHによってその挙動が変化するので、その説明から始めます。
微量要素はホウ素、マンガン、銅、亜鉛、鉄、モリブデン、ニッケルなど、たくさんあります。モリブデン以外は酸性になると溶け始めます。そして中性付近から微アルカリになると、不溶化といって土の中で溶けなくなります。
乾燥地土壌が多い米国などでは、土が中性から微アルカリにあることが多いので、作物の微量要素の欠乏は頻繁に発生します。それだけに古くから研究されてきた歴史があります。
これに反して日本は全国どこでも土は酸性で、モリブデン以外は土の中で溶け出してきます。つまり、微量要素の欠乏はあまり起こらなかった。だから注意もされてこなかったのです。
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関祐二 セキユウジ
農業コンサルタント
1953年静岡県生まれ。東京農業大学において実践的な土壌学にふれる。75年より農業を営む。営農を続ける中、実際の農業の現場において土壌・肥料の知識がいかに不足しているかを知り、民間にも実践的な農業技術を伝播すべく、84年より土壌・肥料を中心とした農業コンサルタントを始める。 〒421-0411静岡県牧之原市坂口92 電話番号0548-29-0215
過剰の対策、欠乏の克服
「土壌診断」という言葉は農業界に浸透し、多くの人がその必要性を感じているものの、調査は専門機関に委ね、その処方に基づいた施肥を行なってきたのが現状だ。ここでは現場で農業者が主体となって行なう土壌調査と診断方法について紹介していく。
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